Top > ウェブ公開作品 > 小説 > 長編小説 > 窓辺に座る小さな妖精 > 主な登場人物紹介
赤いワンピースドレスに身を包み、ポンポンの付いた髪留めで髪を後ろで束ねて、少し伏し目がちに立っているアクセサリ。手を胸元に当てているその姿は、表情と相まってとても大人しそうに見える。ワンピースは裏地が白になっているらしく、カフスと襟の折り返している部分は白色で、赤色とのバランスがちょうど良かった。おとなしめの彼女には予想外に似合っているのかも知れない。
「あの…名前を教えて頂けませんか。」
「う~ん…。専門分野の細分化が進んで、他の分野に目を向ける人が少ないからな。広い視点で物を捕らえる必要があるって事だ。」
「ったく…色恋沙汰には友人は役に立たないってな…。シェークスピアの言うとおりだ。」
元々癖っ毛らしい香澄さんは会社への泊まり込み作業となるとなかなか面白い姿を見ることができる。いわゆる爆発というものだ。低血圧も手伝ってその姿は冬組内部どころか、社内でも有名なんだが、しかし本人はその癖っ毛を気に入っているみたいだ。緩くウェーブのかかった髪は、伸ばしているときはちょうど良く波打っている。パーマをかけなくてもいい、と言っているが、かわいらしさも気に入っているらしい。
「音楽部門からはうれしいお知らせです。如月さん、スケジュールが合って、来週の月曜日、収録に入れるようです。時間の都合もあるかと思いますが、みなさん、収録に立ち会って頂けないでしょうか。シナリオの竹井さんは必須として、音楽に関わりのある籠原さんもいかがしょうか。」
向井さんよりも一回り小さい背丈…150にも満たないのだろうか…。しかし、その清楚な顔立ちと、肩先まで落ちた濃い茶色の髪が彼女を大人っぽく見せる。まだ、二十歳を回ったばかりと聞く。しかし、雰囲気は大人の女性だった。これが…世界を舞台に活躍するフルーティストたる威厳だろうか…。
「あっ、待って下さい。ケーブルを替える必要はありません。フルートを持ち替えてみますね。どのような音が必要ですか? 一応、飛行機の中で頂いたシナリオや設定を読もうと思っていたのですが…つかれて眠ってしまいましたので………」
ひときわ大きな声で現われたのは灰色のスーツに身を包む竹井さん。僕ら冬組のチーフ兼シナリオライターだ。灰色のスーツは似合う人が少ないと言うけど、竹井さんはそれをそつなく着こなしている。眼鏡をかけていてもインテリには見えないさわやかな青年という印象があっている。…全体的に細く引き締まっている体つきがそう僕にイメージを持たせるのだろうか。センター分けのさらさらと流れる髪。眼鏡の奥に見え隠れする鋭く、かつ、柔らかみのある目は、竹井さんの性格をそのまま示しているようにも見える。
「さて、みんな。ちょうど後二ヶ月だ。作業状況の説明、初め」