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5月11日
『キーンコーンカーンコーン』
「朝からいい運動させて貰いました」
「すまん」
「べつに、いいんだけどね」
そういうと蓮は、机に突っ伏した。
そのまま寝るつもりなんだろう。
あの時の力の消費の影響がまだつづいているらしい。
オレも自分の席に着き鞄から道具を取りだし、机に入れた。
「修司君、お疲れさまだね」
「まぁな」
「先生まだきてなくて良かったね。どうしたの・・・っていったってあからさまに寝坊して、遅刻したんだよね」
「わかってるなら聞くなよな」
そういうと同時に担任の蒼月が教室に入ってきた。
なぜか、にこにこしている。
「先生、なんでそんな不気味に笑ってるんですか」
生徒の一人が突っ込む。
「ふっふっふっ、それはだな…」
…
ぐぅ~
昼休みの屋上
「あいかわらず、仲が良いよね。授業中、一緒に寝てるんだもん」
どうやら、蓮もあのまま昼休みまで眠っていたらしい。
「修司はともかく、蓮ちゃんがねぇ~」
「あ、うん…」
蓮は頬を染めて恥ずかしそうに上目遣いにこちらを見た。
晶が、
「もしかして…」
『ピシュ!』
晶にめがけて手に持っているモノを投げつける。
「危ないな~、いないきなりストローを投げてくるなんて」
「そういうおまえこそ、口で受け止めてるじゃないか」
「ふっふっふっ、修行の成果だよ~」
…いや、修行って………剣道部で何をしてるんですか?
「それより、ストロー投げちゃって、大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だ。そいうときはこうするんだ」
おれは蓮のストローをとり、自分のジュースにさして飲んだ
なぜか、蓮は赤くなっている。
晶はにこにこしている。
薫はなぜか苦笑いしている。
…
間接キスってやつですか。
まぁ、蓮も了承みたいだし、まっ、いっか。
いいのか?
放課後
オレは急いで蓮のところにいき、
「蓮、今日は別々に帰ろうぜ」
蓮は不思議な顔をして、
「えっ?なんで」
「えっ、いや…」
オレは頭をかきながら、
「今日はほら、あの日だろ…」
「あの日…。あっ、そうだね♪じゃあ、とりあえず準備はぼくがするから、プレゼントを楽しみにしてるよ(はぁと」
オレは照れながら、
「うん、まかせろ。じゃっ!」
と言うと、教室を急いで出る。
あのまま、教室にいると、茹で蛸になってしまう。
ラブラブだな…。
でも、おれは………。
そんなわけで、おれは商店街に来ているわけだが―――
じっさい、何をかえばいいのか…。
去年は、ローラーブレード。その前は、スケボー。
そうだな…よし!
ダンベルにしよう!!
オレは蓮がダンベルを持っているのを想像した。
…。
って、浮いてる!?
てか、ぜっぇぇぇぇたい、似合わない!!
おれはしばらく、商店街をぶらぶらした。
…
……
………
『もぐもぐ』
おれの左手にはたこ焼き。
右手には爪楊枝。
やはり、たこ焼きにマヨネーズは必要だな。
そうだ、プレゼントは『甘党』のどらやきだな…。
…
はっ、何してるんだおれは!!
つい、宣伝にだまされてしまった。
やはり、空腹にはかてぬか。
でも、まぁ、飲み物だな。
おれが周りをきょろきょろ見回す。すると―――
これはっ!!
いいものみーつけた♪
「たっだいまぁ~~♪」
「あっ、おかえり~修」
おれは買ってきたものを背中に隠した。
いったん自分の部屋に戻り、着替えるとリビングへと向かった。
リビングに入った瞬間、
『パーンパーンパーン』
と聞こえた。
クラッカーはいいのだが・・・何で、浮いてんだ?
あえてそこは突っ込まない。
「お誕生日、おめでとう!修」
「蓮も、お誕生日おめでとう」
蓮はいすを引いて、
「じゃあ座って食べよう」
といった。
テーブルを見ると、ケーキが乗っていた。
まぁ、それはいいのだが―――
何でケーキの上の『誕生日おめでとう!』の文字がでかいんだ?
っーか、ケーキもでかっ!!
「遠慮しないでね」
遠慮もなにも…さっきのたこ焼きが………。
「あの………食べてくるよね?」
蓮が上目遣いに目を潤ませながらおれを見つめる。
…
完敗だ。
っーか、誰も勝てないと思う。
「いただきーます」
早速蓮がケーキを切っている。
浮いてる、浮いてるよ(しつこい)…。
てか、中華包丁できってるのかよ!
「あの、蓮さん?なんで自分の手で切らないんですか?」
蓮が不思議な顔して、
「だって、手が汚れるじゃん」
とあたかも当然のように言いきる。
だんだん、薫に似てきたな、こいつ。
そして皿に盛られたケーキ。
…普通だな。
ちょっとだけ蓮の料理に期待してたんだがな。
「イチゴがいっぱいだな、こ~ゆ~のが好きなんだ」
「えっ!!?…す、すきって」
赤くなる蓮。
なんかなぁ~。
「れ、蓮さ~ん。何か感じがいしてるんですけど」
「………はぅ」
…まぁ、いいか。
おさきにいただきま~す。
…
……
………
そろそろかな~。
「なぁ、蓮…」
「なにっ!!」
凄い反応力だ。
さすがは、運動系だ。
「そろそろ、プレ…」
「うん、プレゼントだね。え~と…はい」
だから、速すぎだって。
いくら…まぁいいっか。
どれどれ、何が入ってるのかな?
オレは紙袋をあけて、中身を見ると…。
「おぉ~、これは…」
リストバントか。
ガラは黒い星のついたシンプルなデザインだ。
「しかし何でリストバントなんだ?」
オレは腕にはめながら聞いてみた。
「うんとね、お守り。理由は…てへ(はぁと」
「うん…まぁ、ありがたくもらうよ」
「ずっと身に付けてないと、効果がないんだ」
「なるほどな、わかったよ」
蓮は微笑んで、
「うん」
なかなかいいものもらったな。
…うん。気に入った。
「よし、今度はオレだな。…はい、これだ」
「ありがとう~………って修?」
包装紙に包まれているのを開けた状態で蓮は硬直しながら尋ねてきた。
「どうした?」
「これ・・・何?」
「檸檬(断言)」
「檸檬って…」
「だって、蓮柑橘系の匂い好きじゃん」
「だからって…」
蓮はちょっと困ったような顔をしている。
まぁ、冗談はここまでにしておこう。
「蓮、すまんすまん。お前の困っている顔を見たくてな」
これが、また可愛いんだ。
「もう~、修のばかー!」
『ストーン!』
蓮の声と同時にテーブルの上にあった包丁が浮いたかと思うと、オレの頬を掠めて、後ろの壁に突き刺さる。
柄の部分まで突き刺さっている。
親父にどう言い訳しよう。
てか、壁を貫通して刃先が外に出てると思うぞ…。
とりあえず―――
「こんどこそ、本物だ」
オレは蓮に小さな箱を渡した。
「なんだろう」
蓮が箱を開けてみると、
「わぁ!これ、ペンダントだね。星型でかわいい~」
そう言って蓮は、ペンダントを掲げていた。
オレはそっぽを向いて、
「それと、オレの気持ちだ」
蓮はびっくりして、
「え…それって……」
「ペンダントの後ろだよ」
蓮は急いでペンダントの後ろを見た。
「修…」
「どうだ?気に入っただろ」
「うん、ありがとう!ずっとずっと一緒に居ようね!!」
蓮はオレの胸に飛び込んできた。
オレは蓮の頭を撫でて、
「あぁ…ずっと一緒だ」
「うん」
これだよかったんだろう。
オレはそう思う。
まぁ…変な力を持ってるけど、なんとかやっていけるだろう。
いいじゃないか、どんな力を持ってたって、そんなの関係ない。
蓮だって、いままで、あの力のことを気にしていた。
だから、あの時だって、あんな暗い顔をしてたし…。
あの事件が起こった後だってオレに愚問とも言える質問をしてきたんだ。
義理の兄妹という関係を超えて。
オレは、蓮を―――
「ぼくを?」
「…好きだってことだよ」
「うん!!」
Fin…