丘の上の物語 -白川蓮ストーリー-

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白河蓮ストーリー 第八章

オレは急いで家に帰ってきた。
時間は既に7:30を回っている。
しかし、家の中は真っ暗だった。
念のために、家の中をくまなく探したが、どこにもいなかった。
最後にオレは手がかりを探すため蓮の部屋を探すことにする。
『トントン』
ノックをする。
………返事はない。
『ガチャ』
ドアを開ける。
そこには予想通り、誰もいなかった。
「…どこいったんだ、蓮のやつ」
部屋の中は蓮の好きな檸檬の香りがほのかに香っている。
ふと机の上を見る。一枚の桜の花びらが乗っかっていた。
もしかしたら…しかし。
桜…花見………。
昔…家族で行った花見。
「………」
皆で行った花見。
「………」
ええい、だめでもともと、行ってやろうじゃないか。
あっていてくれ、オレの勘。

オレは、これでもか!!って位に走った。
蓮のいるとオレが信じる場所に。
…あの花見の場所に。

公園まで3時間かかった。
疲れたと言う感覚は無い。
それどころか、オレはこの公園に行く間、蓮の事ばかり考えていた。
いままで、何で蓮の気持ちに気がつかなかったのか。
今から考えてみれば蓮の気持ちが生活にはあふれていた。

……
………
蓮がこっちに向かって走ってきていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…はぁー、修って歩くのって本当に速いよね」
「そうか?ってなんでこっちまで来てるんだ」
蓮は照れたふうに微笑んで、
「一緒に帰ろうと思って、だめ?」
「まぁ、いいぜ」
オレと蓮は肩を並べて歩き出した。
………
「それにしてもお前たちって、端から見ると恋人同士に見えるねぇ」
と豪快に笑いながら言う。
オレと蓮は真っ赤になって、
「「お、おじさん!!」」
と声を同時にしていった。
「なぁに、ちょっとしたジョークだ。気にすんな」
おじさんはさらに笑った。
「…ジョーク………、か」
………
「あっ、ありがとぉ」
目の前に蓮の顔がある。
「…」
「どうしたの?」
「なにがだ」
「なんだか………、ちょっと変な感じ」
………
……

自分が愚かで、情けなくなった。
オレは公園の中に入り、周りを見まわす。
…いた。
この前の花見に行ったときに蓮と二人きりになったときの場所にいた。
蓮はうつむいていた。
オレは近づきながら、
「こんなとろにいたのか、蓮」
と言い、蓮の肩に手を置いた。
蓮はビクッと体を振るわせた。
そして、しばらくしてから、
「あんなことをして…嫌いになったよね…、ボクのこと」
オレは首を振り、
「バカだな。蓮の事嫌いになるわけ無いじゃないか」
蓮は、顔を上げて
「だって!!…だって…あんなことしちゃったし…」
「別にあんなことしたからって、お前のこと嫌いになるわけなじゃない」
「昔だって…修にいっぱい迷惑かけたし…」
「…」
「それに!!修の好きな薫さんを傷つけようとしたし…」
オレは頭を掻いて、
「ど~してオレが、薫のこと好きなんだ?」
「それは、あのとき…キ、キスしてたし、薫さんの事、かばってたし…」
蓮は俯いた。
「あのなぁ…、おまえなんか、勘違いしてるぞ」
「え?」
蓮は驚いて顔を上げた。
「大体、あれはしてたんじゃなくて、しようとしてたんだ。それに、親友を庇うのは当然だろ」
「そうなんだ」
「当たり前だ。薫は親友、それ以上でもそれ以下でもないよ」
それを聴くか聴かないうちに、蓮はオレの体に抱きついた。
そして、泣いた。
大きい声で。
「…」
蓮って…こんなやつ…だったっけ…。
今オレの目の前にいる蓮は小さく見える。
オレは蓮の頭の撫でる。
しばらくそうしていると、蓮が、
「ボク、…修のことが好きなんだ」
オレは…、
「オレは、分からない。…多分好きなんどと思う、自身が無いんだ。
 だから―――誕生日まで待ってほしいんだ。そしたら答えるよ。それからだと…駄目か?」
「うん、わかった」
蓮が微笑んだ。
オレも答えるように微笑んだ。
「帰ろう」
「うん」
そうして、オレ達は帰宅した。
無論、3時間走ったことは言うまでもない。

初出: 2002年6月10日
更新: 2005年8月20日
企画: 二重影
原作: 二重影
著作: 二重影
制作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2002-2005 Nijyue

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