丘の上の物語 -水瀬千夏ストーリー-

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水瀬千夏 プロローグ

 春がすぐそこまで来ていた。
 街を覆っていた雪も解け、
 辺りは新緑の緑に包まれ、
 桜の木にもつぼみが芽吹きはじめている。

 すべては春の訪れを感じさせている。

 そんな毎年のように繰り返す日々―――
 でも、そんな日常が好きだった。
 友達と交わす会話―――
 そんな学校での日々が好きだった。

「おはよぉ~」
 晶の声。
「おはよう」
「おはよう」
 オレと蓮の声。
 教室での朝のやり取り。
「修、それにしてもやっと暖かくなってきたね」
「あぁ。もうそろそろ花見の季節だな」
「うん♪」
 蓮が笑顔で頷く。

 屋上での昼ご飯。
「だいぶ人が増えてきたね」
 ここは学食から繋がっている屋上。
 室内にも食べる所はあるが、暖かくなるとほとんどの生徒は屋上で食べる。
 オレ達もそいつらと同じだ。
「?」
 オレはふとフェンスに寄りかかって、街を見下ろしている人を見つけた。
 そこだけ空気が違う気がする。
 だけど、すぐ見知らぬ二人がやってくる。
 その人は、後から来た二人とご飯を食べはじめた。
「どうしたの?」
 晶が聞いてくる。
「ん? なんでもない」
「それじゃあ、早く食べよう~」
「おう」

 突拍子のない出来事など…小説でしかありえない。
 でも、今年の春は、
 そんな突拍子のない出来事が起こりそうな気がする。
 なぜだって?
 そんなのはオレにもわからない…。

初出: 2002年
更新: 2005年8月20日
企画: 二重影
原作: 鈴響 雪冬
著作: 鈴響 雪冬
制作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2002-2005 Suzuhibiki Yuki

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