作品紹介 -雪解け水に手をさらして 第二巻-

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雪解け水に手をさらして 第二巻

【サムネイル】 表紙のサムネイル。 最新の短編作品を六話詰め込んで、お送りする短編集第二巻。相変わらず作品のテーマはありません。二重影と鈴響雪冬による短編作品を収めます。2千文字シリーズといった、わずか二千文字で作品を表現するシリーズなどを初めとし、比較的短い作品が集まっています。

 収録作品は、『二人』、『二人』、『いつだって俺は元気さ』、『Thaw』、『フられたけど私は元気です』、『運命の出会いと初恋』の6作品です。

(1万8000文字相当)

単品紹介

二人 (二重影) 2000文字シリーズ

 些細なことから家出をした私は、学校に向かった。夜中の学校は朝とは違う雰囲気をしていて少しだけドキドキした…。

 私はジャングルジムに登った。だって、此処から見る風景が好きだから。一番上まで登り、辺りを見回す。…静かだ。
 本当に静かだった。いつもなら皆がいて、騒いでて五月蝿かったのに。
 私は空を見上げた。満月だった。
 暫く満月を見てるとなんだか寂しくなってきた。
「…お母さん……」
 そう呟くと…。
「何してんの?」
 突然下の方から声が聞こえてきた。
「…空を見てたの」
「そうなんだ。…ねぇ、そっちに行ってもいい?」
 私は頷いた。

二人 (鈴響雪冬) 2000文字シリーズ

 私は今屋上にいる。そして、足元には薫がいる。ここは私のお気に入りの場所。ここなら、たとえ目が見えなくても風を見ることが出来るから…全てを感じることが出来るから。

「ねぇ、薫? どうしてこの場所が好きなの?」
「えっ? 私がこの場所を好きな理由と同じ………そう…」
「聞かせて欲しい…? そう………ね…。笑わないで下さいね」
「私がこの場所を好きな理由………」
「ここは…風が見えるから………ここなら風を見ることが出来るから………たとえ目が見えなくても…目を閉じていても………風を見ることが出来るから」
「ん? もっとあるでしょ?って? そうね………」
「全てを見ることが出来るから………暗闇の向こう側に…全てを見ることが出来るから。いつもは見えない物が…ここなら見えるから………」

いつだって俺は元気さ (鈴響雪冬)

 俺は目を開けた。目の前には妻の墓。手には、二人の形見の子供…かえで。俺はこいつといっしょにやっていくさ。
 こちらも短い作品です。でも、なにかが貴方に伝わるはず…。

「お前が生きていた証はここにいるからな」
 いつのまにか眠ってしまったかえでを『おぶひも』から降ろし、腕に抱く。
「ほら…ね」
 大切に育ててやるさ。
 お前と、俺の子供だからな。
 きっと美人になるよ、お前の子供だから。
 どっちに似るんだろうな、楽しみだよな?
 っと…やべ…泣きそうになってるじゃねぇか。
「心配すんじゃねぇ、俺は元気さ」

Thaw (二重影)

 いつかの小指を交わした約束。そして、その子はもう、この世にはいない。慣れきった世界で、いつもの日常が始まる。
 昔の人の事を思いつつ現在を生活している主人公。いつだって銭湯が大好きで…いまでもその銭湯に通っている。

 そう――此処が俺の凶暴な幼なじみの知夏が住んで居る銭湯。
 いや、今は住んでいたかな。
 俺がこの町を出て行ってから、何年かして知夏は死んだそう だ。
 それを知ったとき、俺は何も感じなかった。
 いや、何か感じたのかも知れない。
 俺は涙を流していた。
 姉さんが言うまでそれが判らなかったのだ。
 俺たちは知夏の位牌を見せてもらった。
 しかし、これが知夏の位牌です。と言われてもピンと来なかった。
 俺には木に文字が書いてある。
 そう、思ってしまった。
 だって、小指の痛みがあるから――。

フラれたけど私は元気です (鈴響雪冬)

 フラれた…。理由なんて覚えてないよ。でも、もう私は元気なんだ。
 ちょっとだけ前向きになれる短編。短い言葉…読んで見ませんか?

 今でも忘れてはいないんだよね、好きっていう感情はないんだけど。
 だからね、こうしてここに来てるんだから。
 ばっさり髪も切ってスッキリして…。
 私は今は元気。
 一人になってから一人で出かけることが多くなった。
 何時も後ろだった自転車だって、今は自分でこぐ。
 そのときに何時も思い出すんだ。
 一人なんだ…。
 昔は君とだったって。

運命の出会いと初恋 (鈴響雪冬)

 いい加減この生活にも飽きてきた。いつもと同じ日常を繰り返すだけの日々…。
 結婚した夫婦。いつもと同じ日々…。でも、ちょっとだけ思い出してみませんか?

 わかっている。この生活が『いつもと同じ』で『変化が無く』て『平凡』で、『つまらない』ものだってぐらい…。
 何も変わらないのが一番幸せという人がいる。でも私はそう思わない。変化があるのが自然の動きだし、だからこそ、楽しいのではないか? と、頭の中でわかっていても、いざ動こうと思うと、だるくてしょうがない。どうしてだろうか。
 水滴が水面ではねる音で私は意識を現実に戻し、体を拭き、バスタオルで包み込むと、浴室から出た。
 いつものような体の交わりをふくめ、私の今の生活は変化が乏しい。近所の人だって同じようなものだと言うことも知っている。何度もこのことを友達に愚痴った事だってある。
 だから、私は突然言い出したのかもしれない。
 『旅行に行こう』って…。

作品について

作者
  • 原作: 二重影、鈴響雪冬
  • 著作: 二重影、鈴響雪冬
  • 脚色: 鈴響雪冬
冊子
  • 規格: B5サイズ、34ページ
  • 価格: 200円
  • 印刷: コピー(表紙のみインクジェット)
  • 表紙: 総天然色 (上質紙)
  • 本文: 白黒・上下二段組み
  • 発行: 2003年11月1日
  • 絶版: 2006年6月7日
  • 重さ: 110グラム
初出: 2004年3月8日
更新: 2005年2月25日
著作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2005 Suzuhibiki Yuki