イベントが始まるまで
心のどこかで写真を解説するイベントを開催してもいいかもしれないという思いはいつの頃からかあったように思います。それが具体的にいつかはもはやわかりませんが、METAFESに当選したことで決心が付いたのは確かです。
ちなみにMETAFESの存在は2023年の募集を開始するという記事を読むまでは知りませんでした。記事を読んで、ワールドというカテゴリがあることを知り、写真展示室を掲載して貰いたい(もっといろんな人に見て貰いたい)という気持ちがわいてきましたので、過去の仕様を調べて、申込用の画像を前のめりで作成し始めました。そして申し込み開始日に申し込みをすませました。
申し込み後、過去のワールドがpublicになっているのを知ったので見に行ったところ、販売ワールドだけではなく展示ワールドも掲載されているのを確認して一安心しました。完全に順序が逆です(苦笑)。
METAFESに応募したころだと思うのですが、イベント期間中に写真展示室を案内するイベントを開催したらおもしろいだろうなあという思いがふつふつとこみ上げてきました。日が経つにつれてその思いは「当選したら開催しよう」という思いへと変化していきます。
そして当落発表当日、当選を発表すると同時に、イベント開催の宣言をします。これで後戻りはできなくなりました。
最初はVRChatだけで開催予定でしたけど、その一週間後にはcluster会場でも開催するのも面白いなあと思い始めていたようです。
裏話としては、VRChatに公開されているワールド「VR宇宙博物館コスモリア」の解説イベントがあって、それも2時間のイベント(話者は3人ぐらい)ですが、そのイベントに参加することで、こういうイベントもありなんだと思ったことは、今回のイベントを開催する上で後押しになりました。
私が現地参加している回の配信アーカイブを紹介しておきます。「VR宇宙博物館コスモリア解説会 第4夜」
写真追加の話
時はさかのぼること2022年の年の瀬、大槌に行こうか、という話が仲間内から持ち上がってきました。その話はいったんそれっきりだったのですが、近い将来写真を追加するかもしれないという話はあることに影響を与えます。
2022年の12月、clusterから移植する形でVRChatに「岩手県大槌町 震災復興記録写真展示室」を上梓します。この時はまだ移植しただけでしたが、3月の大規模リニューアルで、レイアウトを微調整して、写真を1枚追加できるスペースを追加しています。展示室の奥行きをのばして、あとから写真を追加できるようにしました。
初期デザインの頃の写真配置。(バックアップを取ってないので写真でしか見られない)
改装後の写真配置。右側の壁にもう一枚追加できるスペースを用意してある。
写真を追加した後の光景。左右対称ではなくなったが1枚追加しても違和感はない。
時は流れ10月、釜石まつりにあわせて岩手へ赴き、ワールドに追加するための写真を撮ったのでした。
イベント向けのワールド改造
まずは写真の追加です。当初はイベント当日に写真を追加してアップロードする予定でしたが、出し惜しみしてもしょうがないと思い、これについてはすぐに更新しました。2014年から2023年という10年の写真を閲覧できるという区切りの良さも後押ししたような気がします。
リハーサルの結果、解説イベントを開くには工事展開の説明が必要不可欠ということに気づいたので、地理院地図や大槌町の震災アーカイブから画像を取得して、解説用のパネルを作成しています。clusterもVRChatも写真をとって公開することに対する制限はありません(少なくともclusterは規約で明確に肯定されている)し、そもそもワールドに使用する画像は基本的に公衆送信に該当するので、再配布が可能な画像素材を持ってくる必要がありますので、その辺はちゃんと考慮しています。
イベントの写真なんかを振り返って貰うと、追加説明用のパネルはクリエイティブコモンズライセンスの画像を使っていることがちゃんとわかると思います。
解説パネルはイベント限定ですが、設置する場所を考えるとイベント中に出し入れする必要があるので、ギミックで制御しています。特にclusterはイベント開催プラットフォームだけあって権限の設定が楽でよかったです。
ちなみにcluster会場は指し棒をワールドにギミックとして設置していて、VRChatではアバターに仕込んでいます。
clusterではイベントスタッフ専用の部屋にパネル表示切り替え用のスイッチと指し棒が置いてある
4日の朝、VRChatのアバターに仕込んだ指し棒のチェックしている様子
イベント開催方式
clusterの方はプライベート(URL共有あり、フレンドOK)を考えていたのですが、イベント開催三週間前のHello clusterでイベントを告知した後、フレンドの申請が一件もなかったので、参加しやすいイベント形式に変化しました。出入りは激しくなりますが、主催に権限が発生するので、あれたとしても制御できるだろうという判断でした。
VRChatのほうはイベント開催のギミックがないのでpublicはないとして、フレオンかフレプラかで悩みましたがフレプラになりました。結果的に途中の出入りはフレンドのフレンドというのは見受けられましたが、最後まで残った方はフレンドになってくださった方だったように思います。
イベント告知
clusterはHello Clusterでイベント告知タイムがあることは知っていたのでそこは最初から決めていました。VRChatもイベントカレンダーの存在は知っていたので、そこも最初から織り込み済みでした。
しかし、Hello Clusterで一回目の告知をしたあと、イベントカレンダーに登録してもフレンド申請が一件もなかったことに焦りを覚えていろいろ動いていくことになります。
【公式】Hello Cluster(10月17日)
まず、clusterはイベント開催形式に切り替えました。告知用画像を作り直し、イベントページを作成します。
次にBOOTHで大槌町の写真集を購入したかた向けに一斉送信メッセージ(サブスクに入っていなくても月1回は無料で使える)を使ってイベントの告知を行いました。写真集を購入した方なら興味があるかなという想定です。月1回送信することができるので、10月下旬と11月頭に送付しています。
イベントはMETAFES開催期間に行うので、ワールドそのものにポスターを設置することにしました。METAFES初日に訪れた人が翌日のイベントに来てくれたらという流れですね。このポスターはclusterにも設置しています。
スポーン地点の目の前にポスター。この後、ハッシュタグをポスターに入れるという微調整をしています。
せっかく作ったポスターですが、ポスターを他のワールドに掲示してもらうということは時間がギリギリすぎてできませんでしたが、フレンドが自分のワールドに飾ってくださるという一幕もありました。
フレンドが自分のワールド(cluster)に設置してくださったポスター。
いろいろと広報を続けていきますが、まだ足りないという思いは拭いきれません。
そんなとき、Misskey.ioではユーザーが広告を出せることを思い出しました。料金を調べてみると結構お手軽な金額でできるのでこれはありだなと思う反面、ioサーバーでしか表示されないことが気になっていました。ioはユーザーは多いものの、VRユーザー向けのサーバーが別に存在するなかで、ioでの広告の効果に疑問があったのも事実です。
しかし、そこで一つのことに気がつきました。
広告のクリック先をMisskeyの投稿にすれば、リノートでサーバーの外側にも届くのでは?
ioサーバーは現在配信されている広告の一覧を見られるページがあるのですが、そのような使い方をしている広告がなかったのでそういうことができるのか、そして申し込みから広告掲載までの日数を問い合わせしました。問い合わせにはたったの数時間で返信があり、リンクはノートのURLでも問題ない、入金があれば最速で明日から、という返事でした。この時点でイベント開催前最後の日曜日だったので、月曜日から広告を出せるというのは本当にありがたかったです。
早速広告用の画像とノートを作成して申し込み。29日に申し込みと入金が完了し、30日からサーバーに広告が表示されるようになりました。予想通りリノートはサーバーの外側にも届いたようですし、実際にMisskeyからの参加者もいらっしゃったように思います。
Misskey.ioに表示した広告。(リンク先のノートはこちら)
clusterはイベント開催の週のHello clusterにもう一回参加して、再度イベントの告知(イベント形式に切り替えたことも含めて)行いました。このあたりからイベントページの「気になる」が増えていったような気がします。
【公式】Hello Cluster(10月31日)
VRChatの方は相変わらずフレンド申請の動きがありませんでしたが、ある時1件の申請があり、ゼロ回避が見えてきました。VRChatのイベントカレンダーは、公式サイトの月単位で見られるカレンダーより、ワールドに設置されるカレンダー(直近のイベントが掲載される)ほうが見られているようで、前々日から当日にかけて申請が増えていきました。
ここまでしたら後は本番がくるのを待つだけです。
告知を拡散してくださったかた、ポスターを背負ってワールドを歩いてくださったかたなど、本当にありがとうございました。
リハーサルと台本
リハーサルは9月最終週あたりから始めたと思います。といっても出演は私だけですから、実際にワールドに入ってみて写真を見ながら思いつくまま話すというものでした。初回のリハーサルは2時間かかりました。写真の枚数は90枚なので、1枚1分で90分、質疑応答を併せて2時間という想定は、最初のリハーサルの時点で打ち砕かれました。
その後、解説用のパネルを追加したワールドでリハーサル。前回の反省を経てだいぶ削ったつもりなのに事業概要が追加されて結局2時間。
写真を5枚追加して再度リハーサル。当然写真が増えるので時間も増えます。
とにかく慣れるしかないということで、毎週末1回は通しでリハーサルというのを何回か繰り返しました。
しかしどうやっても2時間かかることもあって、2時間はもうあきらめました。
リハーサルを何度か行う中で気づいたのは、その場の思いつきで話すので、解説の内容が安定しないという欠点が見えてきました。また、同じことを繰り返したり、前の写真で説明すべきことを後から説明してしまうという課題にも気づきました。
これは台本とはいかないまでも、解説する内容を端的にまとめた説明することリストを作った方がいいという事に気づいたのは、イベントを開催する週でした。
10月30日、仕事で長時間の移動時間が発生するのもあって、この日からリスト作成を開始。運悪く仕事のピークも重なり、開催当日は祝日ではあるものの午前中は休日出勤。原稿ができたのは開催当日の16時前でした。その後すぐにリハーサルを行い、2時間かかることを再確認しつつ、原稿の問題点も修正。このとき初めて休憩時間が無いことに気づいたので、代官所跡公園が終わったタイミング(ちょうど半分)で5分の休憩をとるように変更しました。お水飲みたいですしね。
台本ができたのはcluster会場開催当日の18時。開催3時間前でした。
イベント本番
11月3日 cluster会場
イベント会場に入ってから「これから始めますよ」といったポストをしようとしましたが、マイクの入力がclusterに反映されないトラップが発動。実は別件でもこれに苦しめられたのですが、復帰するためには起動順序が大事(音声側がエラー落ちした場合、音声側だけを立ち上げ直しても駄目)というのはなんとなくわかっていたので、一旦全部終了させてから、再び立ち上げ直したところ、問題なく入力が反映されました。
この時点で開場5分前だったので、告知ポストは諦めて、開場でじっと待ちます。
始まってしまえばあとはもう必至だったので特に書くことはありません。
cluster開場はイベント形式ということもあって出入りも多かったようですが、視界の左下に誰が来たか、誰が出て行ったかが表示されるVRChatとは違って途中の出入りがわかりませんので、後からイベントページを見て来場者が60人を超えているのにはびっくりしました。
といっても、これは単純な出入りだけで、最後の写真撮影に残った方は9人でした。ただ、写真撮影に参加しなかった方もいらっしゃるようなのと、前半だけ参加した方、後半から参加した方も居るので、実体的には15人ぐらいはイベントに参加してくださったと思います。
開催してわかったのはワンオペだといろいろ無理ということでした。写真も休憩時間と最後の数枚しかとれていませんでした。
休憩時間中の様子(その1)
休憩時間中の様子(その2)
最後まで参加された方々との記念撮影
イベント終了後、各々見学している様子
cluster会場は本当に最初のイベントになりました。
参加された皆さん、ありがとうございます!
11月4日 VRChat会場
昨日の反省を活かして少し早めにログインを行い、もうすぐ始まるよとXとMisskey.ioの両方に投稿します。ただし、自撮りした画像が貼れるほどの余裕はありませんが。
インスタンスを開いて一番目と二番目にログインしてくださったのが元からのフレンドだったので、そこで一気に緊張が解けた気がします。
VRChatについても開催中は必死でしたが、冒頭の挨拶で昨日の反省を生かして写真はどんどん撮ってほしいと台本に追加しました。元々VRChatは写真文化だと思うのですが、促すことでたくさん撮ってくれるだろうという打算です。実際、シャッター音がひっきりなしでした(笑)。
全体的な進行はcluster会場と大きく変わりません。
VRChat会場についてはフレンドから写真のデータを頂いたので、許可を頂いたうえで掲載します。
真剣に聞き入る皆さん(撮影者:ティオさん)
休憩時間中に油断している姿を撮られている私。水を飲んでるところじゃなくて良かった。(撮影者:ティオさん)
末広町商店街の解説シーン(撮影者:ティオさん)
説明がないとわからない写真の筆頭格「郷土財活用湧水エリア」について説明しているシーン(撮影者:ティオさん)
VRChat会場の記念撮影
余談ですけど、cluster(あるいはVRoid)の平均身長とVRChatの平均身長の違いが、両方の記念撮影を見比べるとわかりやすいですね。VRoidのアバターは身長高くなりがち(むしろ他が低い)というのはVRoidユーザー集会などに参加すると度々話題になりますが、ここまではっきりしていると面白いです。
身長が低いアバターをVRで使うと酔いやすいという話もあるようなので、このあたりはお好みで。
イベント終了後は自由解散
Friends+のイベントと言うこともあって、かなりの方が最初から最後まで参加されていたように思います。
VRChatのイベント開催時間は平日や土日にかかわらず21時~23時がピークの時間帯で、この日は三連休の中日で21時~23時という、競合するイベントが最も多い時間帯だったと思いますが、私のイベントに参加してくださってありがとうございます!
この日の20時に、21~22時59分までに開催されるイベントをVRCイベントカレンダーで数えてみたところ、51件もありました…。
イベントを開催してみて気づいたこと
プラットフォームの違い(あるいは開催方式の違い)
入場開始してから、clusterはワールドを自由に眺めてる。VRChatはスポーン地点で円陣を組みがち。
clusterは挨拶をするしないに偏りがある。VRChatはみんなする、無言勢でも手を振る。
ただしこれは文化の違いというよりは、イベント開催方式の違いですね。clusterはイベント形式での開催なので、元々フレンドだった方やXで知り合っていた方以外は、主催と参加者の間にちょっと距離感があったように思います。一方、VRChatはフレプラでの開催なので、初見だとしてもフレンド関係なので、初めましてやこんばんはという挨拶は活発だったように思います。過去に参加した限りでは、clusterのフレンド限定のイベントはみんな挨拶してますしね。
clusterはフィード(モバイルアプリ内で写真を投稿する場所)のほうが写真が多い。VRChatはXに投稿が多い。
フィードだとPCからはまだ見られないのでちょっと寂しいですね。表示内容の共通化に向けてがんばっているようなので待機。
どちらのワールドも、過去に見たことがあって興味があったので来ましたという方もいれば、イベント案内を見て来ましたという方もいて、そこは共通でした。ふと気になったのでVRChatの方は気になったので初めて来た人は居ますかと聞いてみたら何人か手を挙げてました(イベントカレンダーからの流入)。
Quest3のスイートスポットは神
視野角の広さよりも、どの範囲までピントが合っているかという点で、Quest3は神でした。以前使っていたPico Neo3 Linkだと台本を視野内に表示させたとしても文字が潰れて読めなかったと思うので、このイベントはQuest3のピントが合っている範囲の広さにかなり助けられています。
イベントを終えて
まずはイベントに参加された皆さん、ありがとうございました。そして2時間を越える長時間のイベント、お疲れ様でした。
質問を受けながら進行をしたかったのですが、時間の都合もあって私が一方的に2時間解説するという、長めの講演会でもそんな尺は取らないだろうというイベントではありましたが、皆さんからの感想を見ていると、開催して良かったなあと思っています。
前述の通り、告知を始めた頃は反応がほとんどなくて、来場者0人だったらどうしようだとか、マンツーマンだったらどうしようという気持ちもありましたが、蓋を開けてみれば両会場合わせて20~40人ぐらいの方に見て頂けたのかなあと思っています。5人ぐらい来場してくれたら御の字だと思っていたので、一安心です。
ワールドとしてはすでに成熟したと思っていますので、今後の大規模な更新は今のところ予定していませんが、たまに思い出して思いを馳せて頂けると幸いですし、これをきっかけに大槌町あるいは三陸沿岸を旅してもらえると私としては本懐が叶うというものです。
それでは、最後になりましたが、イベントに参加された皆さん、イベントに参加されなくとも告知の拡散等に協力してくださった皆さん、そして応援や感想をくださった皆さん、告知の拡散に協力してくださった皆さん、この度は本当にありがとうございました!
余談
次回開催ですが、今のところ何も考えていません。
と、終了直後は思っていたのですが、適切なタイミングは二回ぐらい思い浮かんでいるので、気分が高揚したらまた開催するかもしれません。といっても、内容としては今回と同じものになりますので、今回参加できなかった人向け、あるいは皆さんの感想を見て興味を持った方向けのイベントになるのかなあと思います。