2021年3月の日記

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2021年3月6日(土曜日)

続・第三回旅チケットは開催予定です

 本日Twitterの主催者アカウントより来週イベントを開催するというツイートがありましたので、鈴響雪冬/雪待終夜としても予定どおりサークル参加することを改めて宣言します。開催は3月13日、土曜日ですのでお間違いなく。
 なお、3月から行うと告知していた取り置き申し込みフォームは1日ずれ込みましたが2日から設置していますので、小説作品を読みたい方はお申し込みをお願いします。申し込みがない限りは搬入しませんのでご注意下さい。

 また、目玉となる作品(実質一作品だけ)である「大槌町 ここは復興最前線 ~そして空と海と山に抱かれた街2018~」の搬入数は7冊で、残り在庫とイコールとなります。場合によっては完売となる可能性も見えてきていますので、入り用の方はこの機会に是非手に取っていただければと思います。
 無料小冊子「大槌町 ここは復興最前線 ~2020年3月20日 三陸鉄道、三度目の再出発~」についてはあと20冊ほどですので在庫は潤沢ですが、この作品単体で通販に登録することは考えていませんのでこの機会にどうぞ。

 当日のスペースについては昨年11月のCOMITIA134と同様にスペース上に手指消毒用のアルコールを設置しておきますので、お気軽にご利用下さい。読者の皆さんにお目にかかれることを楽しみにしています。

2021年3月14日(日曜日)

「大槌町 ここは復興最前線」紙版の完売に寄せて

 昨日、2021年3月13日、第三回旅チケットにおいて、「大槌町 ここは復興最前線 ~そして空と海と山に抱かれた町2018~」の紙版が完売し、同時に「大槌町 ここは復興最前線」シリーズの全作品(2015、2016、2017、2018)が完売ということになりました。2016年8月に2015を発行してから2021年3月という4年半にわたる頒布も一区切りとなります。
 奇しくも今年の3月は発災から10年ということもあり、区切りという単語をよく見かけますし、復興関連事業や民間の様々な活動も今年をもって終了という例も多いようです。一方で、福島県における復興事業はまだまだ続いていきますし、写真集の舞台となった岩手県内をみても防潮提の工事がまだ終わっていないところなどもあり、現地における作業というのは今後も続いていくということを感じています。
 そもそも、2017の前書きにも書いたとおり、「復興」はハードの整備だけではありません。

 (土木関連の)復興事業に限らず、面的なインフラ(社会資本)整備、宅地整備というものは生活の舞台を整えたり生活を豊かにするものであって、「まちづくり」のほんの一部に過ぎません。そこに人々が生活し、生活や集団の課題を見つけ、それに立ち向かっていくその一連の流れ、その過程で生み出される文化や景色が「まちづくり」なのです。
 では、「復興」とはなんでしょうか。
 復興を「元の生活に戻ること」「人々の営みが安定すること」と定義するならば、やはり復興事業はその基盤を用意したに過ぎません。基盤が整備され、人々がその上で生活し、そこに新たな文化や景色が生まれる。そうしてようやく復興は終わりを遂げるのです。

 また、東日本大震災復興基本法の第二条にはこうあります。

被害を受けた施設を原形に復旧すること等の単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策及び一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすることを旨として行われる復興のための施策の推進により、新たな地域社会の構築がなされるとともに、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指して行われるべきこと。

 もちろん、この法律やこれを参照する施行令等によって整備されたものでこれを達成できたかどうかについては今後適切に評価されるべきでしょうし、その反省を次の災害に生かす必要はあります。10年と言うこともあって学会等でも復興事業を振り返る流れがありますし、明日来るかもしれない災害とその復興に向けて知見が集まればと思います。

 閑話休題。
 とはいえ、冠婚葬祭に代表されるように人には時として区切りが必要な場面は多々あります。すべてを抱え込んで歩いていけるほど人間は強くありませんし、人それぞれに見合った形での区切りは必要でしょう。
 青森・岩手は私の出身でもありますし、私個人としてはずっと関わっていくでしょうけど、同人誌あるいは写真集の発行という形での活動はこれを持って一区切りといたします。もちろんこれは紙の本に限定されることであって、電子書籍の販売は引き続き行っていますし、今後は記録(アーカイブ)としての「震災復興の今」を提供できればと思います。
 時々お問い合わせをいただく「紙の本の再販」についてですが、その予定は一切ありません。エイプリルフールで作ったネタである総集編の予定もありません(笑)。お察しの通りこのシリーズの印刷費用は笑えないほどに高く、本体価格だけでも赤字です。倍の値段を出す価値があるというありがたいお言葉をいただくこともありますし、同人誌では数十ページの本に1000円を出すような場面は多々ありますが、やはり4000円、6000円というのは値付けをする側としてもハードルが高いです。
 もし気になっている巻があれば是非とも電子書籍をご利用ください。とくにBOOTHは高画質ですし9割以上が私の収入となります。BOOTHと同等か極わずかに画質が落ちるBOOK☆WALKER(2017のみ容量制限の関係で画質を多少下げている)も5割が私の収入となります。遠征費まで含めたら数十万に及ぶ赤字の解消にご協力をお願いします(苦笑)。

 写真集や復興、大槌町について言いたいことについては各巻の前書きや後書きで書ききったと思っているのですが、全巻揃えた方は多くないと思いますので、少しずつ引用していきます。

私はどういう立場で、どういう考えを基にこの本を作ろうかと散々悩みました。そして、悩みに悩んで辿り着いた答えが、冒頭にもある「淡々と事実のみを提示する」でした。
 私はどうあがいても当事者になる事はできませんし、彼らの気持ちを知ることはできても、真の意味で理解することはできません。そんな私にできることは、写真という媒体を通して、どのような形で復興してきているのかを提示するだけだと思ったのです。

写真集を作ろうという思いが芽生えました。どうしてそんな思いが芽生えたのか、その直接的な理由は今でも分かりませんが、
 どうしてテレビは地震や津波発生当時の映像ばかり流すのか。
 復興事業どころかまちづくりすら知らないコメンテーターが、都合のいいように編集されたVTRだけを見て、全然進んでいませんねと発言する。
 久しぶりに報道されたと思えば、ネガティブな話題ばかり。
 手法が違う他の工事と安易に比較されて遅いと言われる。
 復興に尽力する多くの人々は話題にされることすら無い。
そんな光景に嫌気が差したんだと思います。
 そしてそんな気持ちは、「誰が今の姿を記録し、伝えてくれるのだろう」「今、復興の情報を知りたい人はどうやって手に入れればいいのだろう」という考えに変化していきました。

 2015年度版の原稿を作っている時、もしこの本の評判が良かったら2016年度版も作ろう、そう考えていました。しかし、普段より一ヶ月も早く冊子の紹介ページを公開し、いつもの10倍は告知をしてきたつもりですが、TwitterでのリツイートやGoogle+での再共有、紹介ページの閲覧数は思うように伸びません。

(中略)

 蓋を開けてみるとそれは杞憂に終わりました。最初のCOMITIA117で6割が無くなり、見本誌読書会とはがき投票で6票もいただき、次回のティアズマガジンに掲載され、COMITIA118(委託参加)、そうさく畑FINALと順調に在庫を減らし、本拠地岩手でのCRUSH!49で完売という結果になりました。手にとって頂き、本当にありがとうございました。
 ですが、そんな状況でも2016年度版の制作は決めきれませんでした。
 小説よりは短いものの、数ヶ月は必要な原稿期間とリアルの生活の兼ね合い。遠征費用。印刷費。
 一方で、今を記録したい、伝えたいという一心で撮り続けた一年で4000枚という写真と、読者の皆さまの応援が私を後押ししました。
 悩むこと数ヶ月、ようやく2016年度版を作ろうと決心したのです。年が明けた2017年1月の事でした。

前書きにも書いた通り、復興は、人々が生活し、文化や景色が生み出されるようになってようやく終わるのです。大槌町の中心部はようやく人が住み始めた段階。これからが本番なのです。まちづくりや復興に「正解」はありません。この二つに限らず、我々の生活は数々の選択の上に成り立っています。選択の連続の果てに今があるのですから、選択したことを後悔したり憂えるのではなく、選択した上でより良い方法を模索していくのが今を生きる人間の責務でしょう。その果てに復興、そして大槌の未来、風景、文化、風習があるのです。10年後、20年後の大槌の姿に期待しています。

ここに記された内容は、今この瞬間にも、厳密に言えば撮影した瞬間から「過去」になっていきます。ですが、今を知る方法はあります。それは現地に行くことです。
 被災地。確かにそうかもしれません。
 しかし、三陸沿岸であり、大槌町であり、空と海と山に抱かれた街です。大変なことはありましたが、人々が生活を送る街であり、縄文時代からの歴史と文化を持つ街であり、美しい景色も美味しい食べ物もある街なのです。被災地と観光が結びつくと「ダークツーリズム」という言葉になってしまいがちですが、それに囚われる必要はありません。それはメニューの一つであって、それが全てではないのです。本作では旅のきっかけになればと、宮古から陸前高田まで51枚の写真を掲載しました。見るだけなら写真で十分です。ですが、風や匂い、雰囲気などは現地に行かなければわかりません。観光の分野では「今だけ、ここだけ、あなただけ」という言葉が用いられますが、その瞬間その場所でしか味わえないものがあるのです。
 そして。旅する人はそんな体験を求めて旅をするのです。地元の人の「ここにはなにもない」という言葉が「ここ」の価値を殺します。過疎化は少子高齢化から始まるのではなく、「ここにはなにもない」から始まるのです。なにもないと嘆く前になにかを探してみませんか。それが「まちづくり」の最初の一歩です。2017の前書きでも書きましたが、「まちづくり」は橋や道路を作ることではなく、生活や文化を育むことです。そうやって育まれた文化と景色は人々を迎える立派な資源になるのです。
 三陸沿岸に響き渡っていた復興の槌音は、重機の音から生活の音へ移り変わっていくでしょう。どうかその音が軽快で重厚で煌びやかで誇らしく、住む人も訪れる人も幸せを感じる音色であって欲しいと、切に願います。

 いろいろ引っ張ってきましたが、今一番言いたいことは2018の後書きでしょう。ぜひ東北の景色を堪能して下さい。

 だいぶ長くなりましたが、今後の予定について。
 まず、写真集の刊行のために長らく筆を置いていた小説方面についてはいま新作を書いています。予定よりだいぶ遅れていますが、今年中にタイトルの告知ぐらいはできるのではないかと思います。また、2012年に3巻を発表して以来9年お休みしているReSin-ensは今書いている作品を書き上げ次第着手する予定です。その際には1~3巻の告知も併せて展開できればと考えています。写真集しか知らないという方も気になる作品があれば是非手に取っていただければ幸いです。
 また、今後(復興記録写真集以外の)写真集を出すかどうかについてですが、今のところ何とも言えません。ただ、ぶらぶらと旅をしながら様々な写真を撮っていることはSNSでフォローしてくださっている方はご存じでしょうし、写真集を作るのも楽しいなとわかったので、100ページを越えるような写真集は出さないにしても手頃な値段の写真集を出せたらいいなと考えています。PUR製本をできる安くてきれいな印刷所の情報、お待ちしています。

 最後になりましたが、謝礼を。
 まず、この写真集を買ってくださった方、高い本にも関わらず手に取っていただきありがとうございます。この写真集を通して何か得ることがあったのであれば幸いです。
 次に、2015~2018まですべて揃えてくださった方、知名度が低い頃から応援してくださりありがとうございます。特に2015への反応がなければその後は無かったと思います。ありがとうございます。
 次に、感想の投稿、告知の再共有、委託頒布など、この本を私の手の届かないところまで届けてくださった方、完売は私の手だけでは成し遂げられませんでした。委託頒布でこのシリーズを知り、その後揃えてくださった方もいらっしゃいます。Twitterで見てという方もたくさんいました。ありがとうございます。
 最後に謝礼とは違いますがお願いを一つ。もし、この写真集を手放さざるを得なくなった場合、図書館への寄贈をご検討ください。記録は残すことが始まりですが、残ることでその効果を発揮します。このシリーズは2016の50冊をはじめとして少ない発行数です。そのうちの何冊かでも後世に残すことができれば、念願かなったりです。「今を伝える」から始まった写真集を「当時を記録する」に昇華するためにご協力いただければと思います。
 それでは、次回作でお目にかかりましょう。
 鈴響雪冬でした。

2021年3月15日(日曜日)

お風呂上がりの一冊「津波を乗り越えた町々 東日本大震災、十年の足跡」

津波を乗り越えた町々 東日本大震災、十年の足跡」谷口雅彦

 東日本大震災の発災から今までに撮影した写真の中から約400枚を選出して収録した写真集。
 公式の紹介文は以下の通りである。

10年間、被災地に通い続けてカメラに収めた6万枚超の写真の中から厳選して一冊にまとめたドキュメンタリー写真集。東北地方の被災直後の状況と、10年間で町が生まれ変わるプロセス、そして再生した現在が収められている。

 大変な力作である事は間違いない。
 被災直後の写真だけではなく、震災遺構や石碑にスポットを当てた写真、スナップ写真などはこの手の写真集では珍しい着眼点である。また、発生当日の都内の様子が収録されているのも目新しい。全てではないものの写真にはキャプションが添えられており、撮影時の状況がわかる。

 一方で、期待外れな部分もあった。
 10年で撮影した写真から厳選と紹介されていることから、2011年から2021年までまんべんなく、これまでの歩みが収録されているかのように感じ取れる。
 しかし、実際は、2011が5割、2012~2019が2割、2020~2021が3割という具合に偏りがある。
 2011年の写真のボリュームはなかなかだが、地元新聞社などから発行されている既存の写真集と雰囲気は似通ってしまうし、標榜している「生まれ変わるプロセス」に該当する部分が2割程度しかなく、近年の写真についてはかなりの物足りなさがある。
 カバー袖には取材日程が記載されているが、年に数回しか撮影できてない年もあり、致し方ないと感じる。また400枚しか収録できないため限界がある事も著者は述べている。

 さらに一点挙げるとすれば、この手の写真集や本はA4サイズがほとんどであるが、本書はB5サイズであり、図版としてのサイズ感も少し頼りなさを感じる。
 個人的には惜しい写真集であると評する。

 「発災当時の被災地全体(特に宮城県)の様子をまんべんなく知りたい方」「東日本大震災の写真集を購入するのが初めての方」にはおすすめであるが、「発災から今までの歩みを知りたい方」は物足りなさを感じるであろう。岩手日報社や河北新報社、福島民友などから10年目を振り返るという趣旨の本が出版されているため、そちらの方がおすすめである。

初出: 2021年03月06日
更新: 2021年03月14日
著作: 鈴響雪冬
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