2020年11月の日記

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2020年11月2日(月曜日)

カメラバッグを追加した話

カメラバッグが小さい

 カメラバッグは本当にたくさんの種類があります。ザックタイプから肩掛けタイプ、ミラーレスが増えてきてトートバッグのようなカメラバッグもでてきました。ヨドバシやビッグカメラのカバンコーナーに行くと本当にたくさんのバッグがあります。
 私自身もカメラバッグは二つ持っていて、ザックタイプと肩掛けタイプをひとつずつ持っています。あと厳密にカメラバッグとは言わないかもしれませんが、普段使っているカバンの中に入れるタイプのバッグ(インナーバッグといいます)も持っています。

 さて、ザックタイプはマンフロット(ナショナルジオグラフィックブランド)のウォークアバウト「NG W5072」を使用しています。私の場合メインシステムがAPS-Cのミラーレスですので、このサイズのカバンでも

といった主力レンズ(焦点距離はフルサイズ換算)は全て収まります。
 ですがこれだけなんです。ザックタイプのカメラバッグは機材を収納するところとそれ以外を収納するところの2気室になっていることが多いですが、このカバンの場合、残りの1気室に財布と折りたたみ傘ぐらいしか入りません。あとは頑張っても薄着一着ぐらい。このカバンで一泊二日の旅行に行こうとすると、夏しか使えません。

今まではなんとかなったけど

 このカメラバッグで今まで一番長く出歩いたのは四泊五日の北海道旅行ですが、この時はカメラバッグの他にスーツケースを持って行きました。このほかにも二泊三日や三泊四日の旅行にも何度となく持って行きましたが、全てスーツケースを持っていきました。そして現地での移動は車です。
 車であれば荷物の制限はほとんどなくなりますし、故にカメラバッグはカメラさえ収納できればいいのでこのサイズでも問題はありませんでした。

 しかし、何度か使っているうちにひとつの問題が出てきます。一泊二日でも、少しでも荷物が増えると入りきらないこと。例えば雨が予測されていると雨具を持って行きますが、雨具を入れるスペースがないこと。フラッシュを持って行きたくてもフラッシュを入れるスペースがないこと。そもそも冬場は1日分の服すら入りきらないこと。
 7月に松江・出雲に行ったときはこのバッグとは別に大きめのトートバッグを持っていき、そっちに服を入れていました。由志園で受付にトートバッグを預け、帰りに受け取り忘れそうになったこと。5月に天橋立に行ったときはわざわざホテルに立ち寄ってトートバッグを預けてから移動を開始したこと。

 荷物が二つに分かれると、背負っている分は問題ありませんが、手に持っている方の扱いが課題になります。できることなら全部背負ってしまいたい、そんな気持ちを常に持ち続けていました。
 行き先が都会ならば駅のロッカーに預けてしまえばカメラバッグだけになりますが、そうとは限りません。旅程によっては駅に戻らないので常に持ち歩く必要があります。

全部背負って旅したい

 騙し騙し今のバッグを使っていましたが、新しいカメラバッグ購入を決意したのは9月の連休を利用した熊野三山旅行を決めたときでした。この旅行の旅程は次のようなものです。

 公共交通機関での移動が主体、徒歩での散策が多い(途中峠越えもある)、駅に戻らない旅程がある、三脚を持って行く、こういった条件が重なり、「これはもうカバンを二つなんてあり得ない」という結論に達します。

 これが新しいカメラバッグの条件になりました。

カメラ以外にも収納できるバッグがない!

 カメラバッグの形が見えてきたので、後は膨大な種類があるカメラバッグから探すだけです。これだけあれば簡単に見つかるでしょう。
 ………なんていう考えは甘かったのです。

 ザックタイプのカメラバッグはたくさんあるものの、機材を入れるスペースが異様に広いか(カメラに力を入れている商品に多い)、服を入れるスペースが異様に広いか(登山に力を入れている商品に多い)のどちらかになってしまうのです。
 本来、旅とカメラは相性がいい組合せのはずですが、カメラバッグの世界では、車にガッツリ機材を詰め込んで移動しながら撮影するか、ミラーレスに標準ズームを取り付けたカメラ一台だけもって旅をする、そんなスタイルが中心で、レンズを複数持ち歩いて多少の高低差がある道をトレッキングしつつ写真を撮る、というスタイルはあまり重視されていないようです。
 例えば、奥入瀬渓流や白神山地、熊野古道を歩きながら撮影して温泉に一泊して帰ってくるとか、二泊三日の小旅行にカメラとレンズを複数もっていくとか、想定されるスタイルはいくつもありますが、意外とそれに合致するバッグが見当たりません。
 中にはカメラも服も入るというバッグもあるのですが、ウエストベルトがついていないためにバッグの重さが全部肩にのしかかってくるという、もはや作りに一貫性がない商品まであります。これも長時間の徒歩移動を想定していないのでしょう。

 カメラと同じくカメラバッグもいわゆる「沼」と言われる世界ですが、まさか見つからない方で泥沼になるとは思ってもいませんでした。

 それでも、検索ワードを変えながら探していると、良さそうな商品がいくつか出てきます。以下、候補に挙がった商品を参考までに。私には合わなくても合う人が居ると思いますので。

ハクバ - GW-ADVANCE ALPINE40

 最初に候補に挙がったのは、ハクバの「GW-ADVANCE ALPINE40」。登山用のバッグをベースに、機材を入れられるようにした商品です。山小屋に宿泊することも想定しているため、衣類が入るスペースも広めに設けられています。
 背中がベンチレーションになっているので、カメラの取り出しがサイドからというのが気になりますが、それ以外は結構いい線行っていると思います。ですが、2016年発売のこの商品、既に廃盤になっています。

ザック 各種ベルト 服の収納 背中から機材取り出し 三脚取り付け 備考
× 廃盤
背面ベンチレーション仕様

 ハクバはその後GW-PROというシリーズをリリースしており、中にはトレックを冠している製品もありますが、完全にカメラ寄りになっているため、今回の選定からは除外です。

ELECOM - GRAPH GEAR NEO

 ELECOMがプロ用としてリリースしたカメラバッグです。最初はいいかなと思ったのですが、よくよく調べてみると、サイズはそんなに大きくないため、衣類をたくさん入れたい場合は仕切りを取り外してスペースを広げる、すなわち機材を入れるスペースを減らすしかないようです。ですのでこれも除外です。

ザック 各種ベルト 服の収納 背中から機材取り出し 三脚取り付け 備考
× 底鋲あり
Lowepro - パウダー BP500AW

 最終的に採用したシモダのエクスプロール60と最後まで悩んだバッグです。機材と服のバランスはもちろん、スタビライザーまで搭載してザックとしての機能は十分満たしています。
 最終的には全体的なデザイン(色)と収納量、肩紐の位置を調整できるということで、シモダのエクスプロール60に決定しました。似たような機能性を求めている方ならこのバッグも十分候補に挙がると思います。

ザック 各種ベルト 服の収納 背中から機材取り出し 三脚取り付け 備考
-

 何より公式ページの記載情報が細かくていいですね。トップ収納スペース、26x17x24cmなどと細かく書いてあるのは好印象です。というかどこもかしこも公式サイトに掲載されている画像の枚数が少なすぎると思います。やる気出して。

 長くなったので、シモダ・エクスプロール60については明日の日記に回します。

2020年11月3日(火曜日・文化の日)

シモダデザイン・エクスプロール60(Shimoda Designs Explore 60)レビュー

 レビューと言っていいかはわかりませんが、あまりに日本語の記事が少ないので紹介がてら書くことにしました。
 商品はシモダデザインのカメラバッグ、エクスプロール60です。国内の代理店はカメラまわりの製品を扱うエツミという事でいいのでしょうか。

こんな人にお勧め(というか私が欲しかった)

 このバッグを選ぶ経緯については前日の日記に詳しく書きましたが、一言で表現すると、(歩いて)旅するカメラバッグが欲しい、です。
 既存のザックタイプのカメラバッグの多くは、衣類がほぼ入らないか、衣類ばかりでカメラがほとんど入らないかのどちらかで、カメラと衣服をそれなりに入れながら背負えるバッグが欲しかったのです。具体的には、二泊三日で串本、紀伊勝浦、熊野那智大社、わたらせ温泉、(徒歩で熊野古道(大日越え))、熊野本宮、熊野速玉大社という行程を、写真を撮りながら旅したい(熊野古道以外はほぼバスか電車移動)という事に端を発しています。

エクスプロールシリーズについて

 エクスプロールシリーズは60、40、30の3サイズ(数字はリットルでしょうね)があり、60と40の違いは背の高さ、60・40と30の違いは背の高さと機材の取り出し口の高さが違うように見えます。
 このシリーズはバッグを購入するだけではだめで、機材を入れるためのコアユニット(バッグインバッグみたいなもの)を別途導入する必要があります。
 60・40はこのコアユニット中と小を1個ずつ(または小3個)を入れられますが、30は中1個か小2個が快適に取り出せる範囲のように見えます。公式サイトには中と小をいれた例もありますが、半分隠れてしまっているのでどうしても必要なときに限られるでしょう。

 ユニットを横向きに取り付けることで、カメラを横から取り出すこともできるようになりますが、個人的にそう言う取り出し方は苦手なので、使うことはないと思います。あとカメラの出し入れがしたければ、素直にチェストバッグを取り付けて胸元に置いた方が楽だと思いますが、その当は使い方次第でどうにでもなるのがこのシリーズのいいところですね。

全体像

 これは私が実際に二泊三日の旅行に行ったときの様子です。当日の朝部屋で撮りました。二泊三日+予備一日(天気が悪い予報でした)と雨具に加えて、カメラ本体、レンズ5本という構成です。

 機材取り出し口を開けた様子。コアユニット中と小を1個ずつ使用しています。文字はレンズなど。
 公式の紹介では一番底になる部分(写真右側)にカメラ本体を配置している例になっていましたが、パッキングの重量バランスを考えると一番下は雨具がいいと思います。クッション性もありますしね。全てAPS-C用のレンズなのでスペースにゆとりがありますし、奥行きもゆとりがあります

 横から見るとこんな感じのパッキングでした。体に近いところ、背中の中心に近いところに重いものを、その周辺を軽いもので固めるという鉄板の配置です。後この写真で気づくと思いますが、このカバン自立します。もちろん底が角張ってることによるデメリット(登山の時は岩に引っかけたりする)もありますが、自立するメリットも結構大きいですね。底を丸くする方法はないわけではないので後で触れます。

 カバンにいろいろぶら下がっていますが、使っているうちに場所も変わってきて、二日目の朝はこんな感じに。ショルダーハーネスにペットボトルが入ってますが、これは標準装備です。写真右側(左肩)に取り付けてあるのはPeakDesignのCapture(キャプチャー)(Ver2)とLENS Kit(レンズキット)です。カメラに標準レンズを取り付け、レンズキットに超広角を取り付けておけば、ザックの上げ下ろしをほとんどすることなく撮影を続行できるのでお勧めです。
 キャプチャーVer2は幅が広くて体に当たって痛いので縦に取り付けていますが、Ver3は改善されてそうです。

上部気室

 上部気室の中。仕切りなどは特にありません。別途ケースなどを用意した方がいいでしょう
 なお、この下がコアユニットになっています。ファスナーで気室全体を取り外せるので、コアユニットも取り外せば一つの大きなバッグとしても使うことができます。コアユニットの出し入れもここからしたほうが便利です。背中側は金属フレームで強化されてるので、背面からコアユニットの出し入れしようとすると金属フレームと格闘することになるので。

 気室の内カバー。高さが伸びるのでその分荷物を入れられます。

 上部気室の外カバー。ファスナーが付いていて中にものを入れることができますが、空間はカバーしたの気室と共有しているので、下の荷物が多いとカバー内に入れられる荷物にも制限があります。

ショルダーハーネスまわり

 体格に合わせてショルダーハーネスの取り付け位置の調整が可能です。173cmの私はMサイズでちょうどよかったと思います。バッグ屋さんで購入できれば店員さんと調整できると思うのですが、私は鏡の前で自分で調整したので、もしかしたらLの方が最適かもしれません。

 ベルクロを巻き付けて調整する形式です。思ったより頑丈で、背負っていても不安は全くありませんでした。(荷物は15kg近かった)

 ショルダーハーネスにはループがぶら下がっているので、いろいろ取り付けられます。カラビナをぶら下げておくと、マスクを取り外してカラビナにぶら下げることができたので、コロナ禍の時代の旅にいいと思います。手前はPeakDesignのCapture(キャプチャー)です。
 ただ、このショルダーハーネス、結構肉薄で、ウエストベルトで加重の大部分を支えているとは言え、肩が痛くなってきますね。登山グッズを扱っているお店に行けばショルダーハーネスにクッションを追加するアクセサリーはたくさんあるので、それらの導入を考えてもいいと思います。
 あと、後継機種というか、別シリーズのアクションでは解決されているように見えます

後は細々と

 上だけではなく横にも取っ手が付いてます。横からカメラを取り出すときに便利かもしれませんね。網棚の出し入れも簡単。

 片側には三脚を入れるバッグが収納されています。このバッグも使わなければ取り外し可能。

 上部気室のカバーもそうでしたが、底にもループがぶら下がっています。

 このループに専用のストラップを通せば、三脚や丸めたテントをくくりつけることができます。かなりがっちり固定できそうです(未使用)。底が角張っていることが気になる方はこれをうまく使うといいかもしれません。

 スタビライザーにHAKUBAの「首の負担がZEROフック」を取り付けることもできます。スタビライザーのバックルが押し当てられるので少し調整しづらくなりますが、問題なく使えます。首の負担がZEROフックはふざけた名前の製品ですがあるとないとでは全然違うのでお勧め。
 チェストバッグにカメラを入れずにずっと首にぶら下げておきたい人はぜひ使ってみてください。ただ、バッグとの相性はかなりあるので注意が必要です。(そもそも取り付けられないバッグとかいっぱいありますし)

まとめ

 シモダ・エクスプロール60を二泊三日の旅で実際に使ってみた感想を。

メリット
カメラと衣類を大量に持ち運ぶことができる
 とにかくこれが強いです。最も重要な目的、カメラと服を一つのカバンに詰め込んで運ぶは十分達成できました。今回の旅では、このカバン以外の荷物は一切持っていません。自然の中を歩きながら写真を撮りつつ(渓流とかトレッキングとか)、歩いた先の温泉宿に一泊する、みたいなスタイルにはぴったりだと思います。登山はわかりませんが、製品の発想は登山がベースでしょう。
ウエストベルト、チェストベルト、スタビライザー搭載で重い荷物も楽々
 ウエストベルトがある事で主さの5割から7割を分散できるので本当に楽です。多分15kgぐらいの荷物だったと思うのですが、問題なく歩くことができました。
デザインがいい
 カメラバッグの多くは、いかにも機材用という感じがして野暮ったいのが多いですが(ミラーレスを前提にしたモデルとかだとだいぶカジュアルなのが増えてきましたけどね)、このバッグは色がいいです。日記で紹介したのは「シーパイン」です。
撥水性はまあまあある
 旅行三日目、記録的短時間大雨情報が隣接自治体に出るぐらいの大雨の中を歩くシーンがありましたが、少し湿ったぐらいで済みました(レインカバーあり)。超大雨でそれぐらいなので、普通の雨なら問題ないでしょう。
デメリット
一式揃えると結構いい値段になる
 バッグはバッグだけなので、中・小のコアユニット1個ずつ(または小3個など)、レインカバーを追加購入する必要があります。全部揃えると6万ぐらいかかると思います。ただ、コアユニットはシリーズで使い回せるので、あとあと30や40を追加するときには不要です。個人的には30を追加して一泊二日旅行にも使いたいなあとか思ってます。
ショルダーハーネスが薄い
 途中でも紹介しましたが、ショルダーハーネスのクッション性がほとんどありません。アクションシリーズを検討するか、登山グッズを扱うお店でパットを追加するといいでしょう。
とはいえ機材の入れすぎ注意
 今回は二泊三日、移動のほとんどがバス(トータル3万歩)でしたのでなんとかなりましたが、ここに超望遠があったら厳しかったと思います(最初は入れていたが直前に取り出した)。三脚と超望遠はトレードオフになるかなという感じです。自分の体力に見合った荷造りを!

 以上が、エクスプロール60の紹介と使用感でした。もう少し手を入れる必要がありそうですけど、旅するカメラバッグとしてはとてもいいものを手に入れたと思います。正直同じシリーズの30も欲しいです、はい。

2020年11月7日(土曜日)

ここだけの話

 Twitterで岩手とか青森の話題や写真を投稿していると、そういったローカル情報を扱うアカウントや地域団体のアカウントにフォローされることがあります。それ自体はとても嬉しいのですが、そういったアカウントは別に同人誌の告知をリツイートしてくれたりするわけじゃないんですよね。「大槌町 ここは復興最前線」なんて地域情報の塊なんですけど…。

 全フォロワーに同人誌について反応して欲しいという気持ちはないですが、Twitterアカウントは同人+日常なので、同人の方も同じぐらい見て欲しいと思うのは自然な流れではあるのですが、日常の方ばっかり反応されると、それはそれで悲しくなる部分ではあります。
 同人誌に反応するフォロワーはやっぱり同人誌に関わりのある人(書き手、読み手)なので、同人誌という趣味は趣味としてはかなり独立しているというか、とっつきづらい領域にあるんだなあとなんとなく感じますね。
 評論系同人誌は一般メディアやネットメディアで取り上げられることも増えてきてだいぶ垣根は取り払われた感がありますが、それでも本当に全然だなあと思います。

2020年11月15日(日曜日)

【図書館総合展2020】『図書館×同人誌』対談を見て

 知り合いが出演している、興味があるジャンルという事もあって2時間(長いな!?)の動画を見てみました。

 以下、動画の時系列に沿いつつも思ったことなど。

ストーリー展開の典型

 (商業作家の書いた同人誌を作家研究の一環で調査するといった、同人誌を土台にした調査研究の中で)

 前編、42分34秒付近

私が大学院の時に言われてそれは今ある資料じゃ無理だって諦めたのが、流行っている典型的なカップリングのストーリーについての研究

(引用者注:感嘆詞等は省略)

 あー、これは確かに同人誌を収蔵していないと難しいなあ、と。
 例えば、カップリングの表記を調査している人は居るので、そういった研究からカップリングの趨勢はわかると思いますが、ストーリーの典型は見えてこないですよね。投稿サイトのタグで「ほのぼの」とか「バッドエンド」みたいなお話の方向性はわかるけど、ストーリー展開の分類はすごく難しいでしょうね。

カップリングは学問! (たぶん)世界初の「カップリング表記研究家」に会ってきた

 あるいは、エロマンガ表現史と題して、1980年代あたりから出てきた表現を掘り下げている書籍はありますが、ストーリーは現物を確認しないと見えてこないので難しいなあと。後世からこういう研究をしようとしたら同人誌の収蔵は意味があるかなと思いますね。
 コミックマーケットやコミティアが同人誌を収集しているのは有名ですが(コミケの方は明治大学図書館で閲覧請求もできる)、コミケやコミティアに出る同人誌ってごく僅かなんですよ。地方の即売で出回ってるようなコピー本は本当に手に入らない。個人の日記がブログやSNSといったデジタルメディアになってしまったことで、情報が最も残らない時代とすら言われますけど、そう言う意味でも紙になっている資料は大事だなあと思います。

(公共)図書館は作者に気にせず同人誌を収蔵してもいいと思う

 ここから先はいわゆるオリジナル作品の同人誌に限ってのお話。

 図書館と同人誌の関係ですけど、積極的に納本・寄贈している人も居れば、勝手に寄贈されていることを知って納本制度を知る人、あまりの怒りに名乗り出てきた寄贈者とバトルを始める人、いろいろな反応があります。今年も年初にバトルに発展した例がありましたね。
 この手の話題になると感情的な話と納本制度や寄贈、著作者人格権(公表権)とごっちゃになって酷いことになるのですが、まとめると次のようになります。

  1. 公表権(著作権法18条)は作者に存在するが、すでに同人誌として発行(公表)されているため、公表権を根拠とした論理展開は難しい。
    (そもそも公表権は生み出した未発表の著作物をどのような形で表に出すかという話なので、同人誌として出すという部分で意思を示したのでそこから先は権利の範疇にないのですよね)
  2. 貸与権(著作権法26条)は営利を目的としない上演等(著作権法38条)に該当する、図書館における無償の貸与には関与できない。
    (図書館は無償で貸与ですので、38条によって公衆に提供できます)
  3. 図書館は図書館法(第2~3条)によって、図書等を収集、整理、保存して一般公衆に利用させることができる。
    (3条によって努力義務ということにはなってますけど、図書館が図書を収蔵・貸与するのはこの辺が根拠法になってます)

※この辺りの話は後編の最後に簡単に触れられている

 つまり、二次創作だろうがオリジナルだろうが、同人誌としてすでに公表されているものを収蔵して貸与することには何ら問題がないわけですね。オリジナル同人誌の作者が怒り狂ったとしても、それはもう自分の権利が及ぶ範囲にはないのです。それどころか、図書館に圧力をかけて取り下げてもらう行為の方がむしろ威力業務妨害や公務執行妨害になりかねないと思います。

 ただ、同人誌は作者と読者、あるいは作者と図書館の距離が近い(間に出版社や編集が入らない)という側面は当然あって、作者と図書館の信頼関係が十分成熟してない現時点ではそう言う反応が出てくるのは仕方がないのかなあと思います。よりよい方向に発展していくといいですね。
 個人的には、オリジナルの作者さんは自分の作品を守るため、他者の権利を不用意に侵さないためにも著作権法を軽く勉強してもいいのではと思います。

同人作家と図書館の関係

 後編、14分25秒付近

作家さんが書いた作品と一緒に参考文献と影響を受けた本を、岩波文庫さんの芋づるマップ、あれを同人作家さんの書いた代表作、私の書いた作品がどういう風に図書館の本に紐付けられて、私の作品はこういう本から成り立っているんですよというのを可視化したい

(引用者注:感嘆詞等は省略、「芋づるマップ」は「芋づる式!読書マップ」のこと)

 書店がよく「**選書」みたいな形で、有名作家や地元密着作家が選んだ本を並べるフェアをやっていたりしますけど、あれの同人作家版ができたら面白いなあと思ってるんですよね。書店の「書泉」はいまやアニメイトの子会社ですし、同じく子会社のメロンブックスが扱っている同人誌を並べたりしているのですから、そう言う専門書店はできそうだなと思います。
 となるとあとは図書館ですが、図書館でやるなら郷土作家や郷土史を書いている作家が対象になると面白いなあと思います。

それを同人誌でやりたいって思ってるのはどうしてだろう。
例えば岩手出身の作家さん、プロ作家さんなら、その作家さんを知りたいという人もいるだろうし、効果的にその先生の事だった知りたいという一定数が見込める。

(引用者注:感嘆詞等は省略)

 一定数が見込めるならそれは民間の会社というか、出版社がやってしまうのでは、と思いました。現に、岩波書店の読書マップは新書フェアという形で全国の書店に配布されているわけですからね。図書館の性質を考えると、市場では有償提供されてる作品を図書館がやることの意味は当然あるわけですけど、図書館にしかできない分野でもあるのかなあと思います。
 ただ、この場合、まず同人誌とは何か、というところから図書館がまとめ上げ、知識として提供する必要があるのかなあと思います。

公共図書館と同人誌

 私設の博物館や私設の漫画図書館ではなく、公共図書館で同人誌を収蔵する意味は何だろうという話。長いので引用ではなく概略で。後編、32分43秒付近

 商業誌と同人誌の違いって編集が入るか入らないか、流通ルートが異なる、ぐらいの違いでしかないと思います。動画では(この前後ではありませんが)同人作家の熱量について触れている部分もありましたけど、商業作家だって当然熱量はありますし、それを広げようという出版側の熱量だって当然あります。むしろ商業出版の方が会社の存続がかかっているので熱量が多いかもしれない。(専業同人作家は別。熱量に関しては作者と読者が近いことによってその熱量を感じやすいという側面があると思う。)
 結局、商業誌と同人誌の違いは、編集が入るか入らないか(これだってアンソロジーには主宰という編集者がある)程度の違いでしかなく、出版というくくりで見たら全く同じものです。さらに境界をぼかしていけば、商業誌と同人誌の間には、自費出版という作者が出版社にお金を払って編集やライターをつけて発行してもらう本もあるわけです。
 そうなると、公共図書館で同人誌云々という話は、既存の本と流通ルートが違う作品をどのように扱うかというレベルの話でしかないのかなあと。図書流通センターや地元の書店や組合から買うのか、それとも同人誌専門書店から買うのか、それぐらいの違いでしかないでしょう。

 なので、選書の基準は図書館ごとの選書基準でいいと思いますし、そこに商業誌と同人誌の境目はないと思います。
 郷土資料に厚みを持たせたい公共図書館ならそういった同人誌を、技術系に厚みを持たせたい大学図書館ならそういった同人誌も収蔵対象にすればいいだけなのです。
 むしろ問題になるのはインデックスの登録方法やジャンルの分類でしょうね。全国の図書館を横断的に検索できるカーリルは検索キーがISBNなので、ISBNが振られていない本は検索できないという問題もあります。
 また、情報の正確性の担保という問題も大きいでしょう。商業誌には最低限校正が入っているので一見して変なものは弾かれるでしょうが(全く変な本がないわけではない)、掲載されている情報の信頼度という問題はあると思います。もっとも、図書館は収蔵した本の中身の正確性に責任を負う場所ではないと思いますし、現にトンデモ科学の本なんかも収蔵しているでしょうけど、選書の基準をどのように定めていくかは難しいかなと思ったりします。

 と、ここで思うのですが、コミックZINとかメロンブックスとかとらのあなといった同人誌を扱う専門書店は、図書館に本を卸す事業を始めて見たら面白いかもしれませんね。当面は作者・専門書店・図書館との信頼関係構築が必要なので、作者に一冊ずつ卸していいかを聞くことになりますが。

学校図書館と同人誌

 後編、37分29秒付近

商業として出てもある程度経済的にも成り立つだろうみたいなものじゃないものを同人誌の中に求めて、そう言うものが学校図書館にあるといいと思ってますか?

いいと思ってます。10代の子が書いてる普通に小説とかパロディとかあるといいと思ってる。

じゃあ例えばこれを書いたのは同じ10代の方なんだよというのが、17歳天才デビューみたいな商業本じゃなくて、そうじゃないけどこれもあなた方と同じ高校生が書いてるんだ読みたいな感じのいろんな方向性が見せたいって事ですか?

そうですそうです。

(引用者注:感嘆詞等は省略)

 個人的に今回の動画の見所はここですね。この視点はめちゃくちゃ面白い。なんなら学校が積極的に同人誌即売会で本を買って集めて欲しいぐらい(作者からすれば阿鼻叫喚になりそうですが(笑))。
 最近だとネットによって様々な情報と距離が縮まったが故に、同年代や年下でもやたらとうまい人の作品が目に入ってしまって萎縮してしまう人も居ると思うんですよね。例えばお金を貯めて東京のコミケに参加して衝撃を受けるのと、TwitterやPixivを眺めてたらそう言う作品が目に入ってしまうのとではまた違った受け取り方になると思うのです。
 当然同じ学校にもレベルが高い人がいる可能性はもちろんありますし、地方の同人誌即売会、サークル数20とか30ぐらいの小さなコミュニティでもあり得る話ですが、それとはまた距離感が違うので受け取り方も変わってくるのかなあと。

 あと、レベルとは別に、同年代の同じ学校に通っていたというレベルで同地域の子が同じ地域をどのような目で見ていたのか、というのが在校生の同人誌から伝わってきたらとても面白いんだろうなあと思います。まさに多様性、多様な価値観。

 見方を変えたら学校の文集だってアンソロジーみたいなものですし、同人誌との垣根は学校図書館の方がずっと低いのかなあ、なんて思ったりします。

 動画の感想はここまで。後はふと思ったことを別項目で。

蛇足:作者と図書館の距離が近いことに付随して

 図書館は本の(主に郷土資料の)寄贈を募っていますけど、寄贈された本の扱いは図書館に一任されるのが一般的です。なので収蔵しなかった場合の連絡は特にないでしょう(収蔵した場合は受領証みたいなのが届く)。ただ、作者にとっては作品なんですよね。図書館からすれば他の商業誌と同じ本でしかないですが、作者自らが寄贈した本は、作者にとっては重みがある一冊だと思います。
 そういった本についても収蔵しないという判断は当然起こりうるわけですが、そういった連絡を一切しないというのはちょっと素っ気ないなあという感じがしますし、次の作品を寄贈しようとする作者の心を折りかねない側面があるなあと思っています。

 定型句のように「図書館に一任」と言われますが、もう少しこの部分を柔軟に対応してくれたらなあと、寄贈する側の作者としては思います。寄贈お願いします、でも連絡はしませんというのはどうなのかなあと思います。

2020年11月24日(火曜日)

「#iiiwateフォトコンテスト2020 Spring & Summer」入賞!

「#iiiwateフォトコンテスト2020 Spring & Summer」審査結果発表

青く染まった海の上に花火が浮かぶ。
「藍の海 菫の空に 浮かぶ菊」

 岩手県が開催していたフォトコンテストで入賞を受賞しました! 例年お盆の頃に開催される「釜石納涼花火」の写真です。

 このフォトコンテストはTwitterから応募できるという手軽さもあって11作品ほど応募していましたが、その中の一枚が受賞作となりました。実はちょっと意外な写真が選ばれたのですが(本命は復興部門の大槌駅に汽車が来る写真でした)、11作品の中でもいい作品と自負できる作品なので選ばれて良かったです。

 受賞コメントにも書いたのですが、一見普通の花火の写真に見えます。綺麗な花火の写真を撮ろうとしたら、山の上から取ったり、仕掛け花火のような派手な花火を選ぶでしょう。ですが、この写真はそういった写真とは違う、メイン会場の対岸、サブ会場の見学スペースから撮った普通の花火の写真です。
 ですが、この構図にはちゃんと意味があります。
 写真左下に白く見える巨塔のようなものは釜石大観音、その右側のクレーン車は釜石港の代名詞とも言えるジブクレーン、右下の中層のマンションは災害公営住宅。一番左、紅白のガントリークレーンは復興支援の一環で、大阪府の堺泉北港からはるばる釜石までやってきたものです。花火は秋田県の大曲の花火師が作ったもので、そんな花火をお盆に帰省してきた家族と見上げる、そんな一枚になっています。

 この一枚に釜石の歩みと繋がりが凝縮されている、そんな写真です。
 この日に撮影した花火のほとんどはこの構図なので、撮った当時はガントリークレーンから災害公営住宅まで全部含めて撮影するという意図がちゃんとあったのでしょう。しかし応募するときにはすっかりそのことを忘れていました。今回受賞候補の連絡を頂き、改めて写真と向き合って、そういえばそうだったと思い出すことができました。振り返る機会を下さったフォトコンテストに感謝します。そして、岩手のアピールに携わることができて良かったです。

 さて、フォトコンですが、最優秀賞が復興部門の写真というのがなかなか感慨深いものがあります。宮古市の庁舎はかつて港の側にありましたが、津波で被災し、宮古駅の近くに新庁舎を建設して、旧庁舎は解体することになりました。これはその途中の写真です。そしてその下を未来ある若者が自転車で駆け抜けていく。
 悲しいことはあったけど、前を向くことは忘れない。そんな力強さを感じる写真ですね。
 個人的にこのフォトコンテストで好きな写真は、Eijuさんの「祈りの舞」です。純粋にかっこいい。いろいろ大変な時期ですが、岩手は岩手らしくあってほしいと思います。

2020年11月29日(日曜日)

COMITIA134のお礼&旅チケット3に参加申し込みをしました

 もう一週間が経ちそうになっていますが、月曜日のCOMITIA134に参加された皆さん、お疲れ様でした。途中で撤収もあるかなと思ったのですが、結局最後まで座っていて拍手で見送りしました。一般参加の方では列形成が密だったとか、並んでいる間ずっとしゃべっている人達がいただとかそんな声も聞こえてきていますが、サークル側としてはスペースも広くて少し前のCOMITIAという雰囲気でしたね。この辺りの細かい話についてはイベントレポートに書こうと思います。

 さて、2021年3月13日(土曜日)に開催される「旅チケット」にサークル参加を申し込みました。先着順での受付ですので、受理されれば問題なく参加できると思います。いろいろ先のことが読めない時期ではありますが…。

 旅チケットは第1回開催の頃から知っているイベントで雰囲気も良さそうでしたので初参加ながらサークル参加することにしました。旅と地理に関するイベントですので、頒布作品は「大槌町 ここは復興最前線」のみの予定です。同写真集はもしかしたらこれが最後の頒布になるかもしれない(なってほしい)と思います。
 旅行・地理に関連した同人誌が一冊でもあれば参加できるということですので、取り置き申し込みを考えていますので続報をお待ちください。

 3月13日という日付は当然3月11日の翌々日ですが、年中イベントに参加している身としては特に気張らず参加できればと思います。

 なお、3月のイベントに申し込んだので、参加するかどうか悩んでいた2月のCOMITIAは申し込まないことにします。3月にお目にかかりましょう!
 (というか、在庫があと7冊なのでティアと共有できないのですよ…)

初出: 2020年11月02日
更新: 2020年11月29日
著作: 鈴響雪冬
Copyright © 2020 Suzuhibiki Yuki