2019年6月の日記

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2019年6月9日(日曜日)

第四回文学フリマわいて

 2019年1月から日記を書いてないのにいきなりここだけと思うでしょうけど(私も思います(苦笑))、とにかくこれは気持ちを固める上で書かなくてはならないと思ったので。1月からの日記も追々書いていきますので、楽しみにしている方はもうしばらくお待ち下さい。

 大槌町写真集2017の文学フリマ岩手での頒布状況を聞いて、今まで漠然と思ってきたことがよりはっきりしたのでちょっとした備忘録として。

 結論から言うと、「私の写真集は多くの人には受け入れられない」という事、それがはっきりしました。「一般」と書くと書きやすいのですが、それでは主語が大きすぎるので、スペースの前を素通りした累計数百~数千の人の中では、としましょうか。(そもそも同人誌即売会に参加する人が一般かどうか…。)
 私の写真集は一環として「メディアが伝えない」という部分を押し出してきました。2015や2016の時は、「メディアが伝えるのは被災当時の映像ばかりで誰も今を伝えてくれない」でしたが、2017は「空き地や旧庁舎を始めとした問題点ばかりが取りざたされて誰も今を伝えてくれない」だったかもしれません。とにかく、誰も伝えない、もしかしたら誰も記録していないものを記録し、写真集にして伝える、それが私の写真集のテーマです。
 告知ページの売り文句でもある「メディアが伝えない」とは、決してネガティブな意味ではなく、メディアが気づかない、気づいていたとしても紙面に載せられない、小さな事、別の視点、そういう意味なのです。もちろん、2015の作り始めの頃は、メディアに対する憤りもあったでしょうけど、最近それは落ち着いてきました(笑)。
 平たく言えば、「ニュース」ではなく「日々の積み重ね」を綴る、そういう趣旨の写真集です。
 そしてそれは、「メディアが注目をしない」≒「普通の人は注目をしない」と言い換えることができます。(「=等しい」ではなく「≒ほとんど等しい」としたのは、メディアの考えイコール一般人の考えではないと思っているからです。)

 私の写真集には、被災直後の多くの家が流された後のような写真も、津波の襲来やそれを高台から見つめる人の写真も、ヘリコプターで救助される人の写真も、基礎だけ残った自宅の前でうずくまる人の写真も、行政と住民が復興方針を巡って対立あるいは融和する写真も、仮設住宅で交流する人の写真も、完成した道路や住宅の前で喜ぶ人の写真も掲載されていません。そういった写真は報道機関やら行政やらNPOなどからたくさん出ており、私が作る必要がありません。もちろん、被災直後の写真を持っていないので作ることもできませんが、もし持っていたとしても収録しなかったでしょう。

 私の写真集は、風景写真に例えて言うなら、路傍の草花が生長していく様子を淡々と記録した写真集です。
 きっと多くの人は富良野のラベンダーだったり、滝川の菜の花だったり、ひたちなかのネモフィラだったり。そんな大きくなくても近所の桜並木だったり、コスモスの群生だったり、ヒマワリ畑だったり。そういったものに心引かれるでしょう。私も重いカメラとレンズを担いで(フルサイズ勢はご着席下さい)遠方に写真を撮りに行くのでよくわかります。
 でも、この写真集はそうではない。
 有名な花畑の、片隅の、日陰の中の、地元の人も視界に入っているけど気づかないような小さな燦めき、そういうものに注目した写真集です。花を咲かせて燦めいているときだけではなく、土も、芽も、茎も、花も、萎れ、土に還り、また芽吹いたときも、淡々と追い求めた、そんな写真集です。

 これは、物事の善し悪しではなく、視点の違いでしかありません
 そしてこの視点は多くの人に訴えかけることはできません。平たく言えば地味です。でも、そんな視点を求めている人が居る、そう思ってこの写真集を作ってきました。これからもちょっと違う視点の写真集をよろしくお願いします。

備忘録 文フリ岩手の告知

文学フリマ岩手では告知の文章をいつもと少しだけ変えていたので備忘録として。(いつもはイベント名が先頭に来るが、今回はキャッチフレーズを先頭にした)

伝えたい、震災復興の「今」

6/9 #文学フリマ 岩手では、
「大槌町 ここは復興最前線 ~震災復興記録写真集2017~」を委託頒布します!

地元メディアも伝えない、日々の歩みを750枚の写真で綴ります。
委託先:ウ-01「CafeCappucci」様
https://c.bunfree.net/p/iwate04/13968

2019年6月10日(月曜日)

「かの書房」さんへの委託体験記

 「大槌町 ここは復興最前線 ~震災復興記録写真集2017~」を札幌市豊平区の「かの書房」さんの「貸本棚」を利用して2か月ほど店頭に並べて頂いたのでその結果の報告と所感を。
 まずは前提となる条件です。

 続いて二か月による委託の結果とその収益です。

 本の送料が思った以上にかかるかなという印象です。仮に卸値を3000円にしていても売り上げ1冊だと赤字ですね。元の単価が高いので2冊売れれば黒字でしたが、一般的な同人誌(500円とか1000円)の場合、相当数売らないと黒字になりません。しかし、一度に預けられるのは1種類5冊なので、上限も低いです。となると、送料を抑えるしかありません。

 という具合に、なかなか厳しい数字になると思います。1000円×5冊なら3480円の黒字ですね。

 普通郵便やゆうパケット、宅急便コンパクトで送ることができて(薄い、小さい、軽い)、一冊あたりの単価が高く(1000円)という条件がそろっていれば金銭的な面ではクリアできると思います。
 元々、道内の作家で書店で手に入らない作品(例えば文フリ札幌に出ている人の本とか)をターゲットにしているので、遠方から発送する、すなわち送料が高いというのは想定外の部分もあるでしょう。

 お金の話ばかりしてしまいましたが、普段のイベントは遠征費用だけで数万かかっていますからこの点は気にしません。むしろ、まず接点がないであろう北海道という遠い地で一人の読者に本を届けられてよかったです。今回委託した意味があったと言えます。大切に読んで頂ければと思います。


 個人的にちょっと不満だったのが、かの書房さんのTwitterアカウントで委託の告知をリツイートしてもらえなかったことです。
 本業は書店であり、貸し本棚はあくまでもサブ、オマケという位置づけなのは仕方ないです。数多の新刊を扱う中で、貸し本棚の本だけ特別扱いできない事も分かります。ただ、サークルとサークルの間柄でやる委託は当たり前のように自分の作品も委託作品も同じような熱量で告知する、してもらえるという認識だったために、かの書房さんのドライな対応に少々驚いた次第です。「貸し本棚あります」や「貸し本棚の作品入れ替わっています」といった全体のツイートは何度かあったので、そういう方針なのでしょう。
 サークルとしては、札幌の書店に自分の本がある事を積極的にアピールしていく必要があるようです。運がよければかの書房さんの利用者の元へツイートが届いてそこから広がる…かもしれませんね。
 書店に委託するというのは、その書店の一部に組み込まれるということですから、サークル側の努力が一層必要だと思います。

初出: 2019年06月10日
更新: 2019年06月30日
著作: 鈴響雪冬
Copyright © 2019 Suzuhibiki Yuki

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