掌編小説

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俺は何時だって元気さ

「なぁ、かえではどう思う?」
「そうか…間だ答えられないか」
「あたりまえだよな?」
「ん? どうした?」
「うん…そうだよな」
「かえで、かえでは元気がいい。かえでなら大丈夫だ」
 何時か、俺はかえでに、お前の姿を見るのか?
 そのとき、俺はなんて思うんだろうな。
 そのときのためにも…絶対忘れないさ、お前のこと。
 運命の出会いとかそんなのは信じないけど…お前とは運命の出会いだったよ。
 俺はお前の何にほれたんだろうな?
 そんなの関係ないよ。
 好きだから。
 今でも。
 これからも。
 ずっと。
「ん?俺か? 俺は元気さ」
 皆に支えられて、お前の妹とか、家族とか。
 周りの人とか。
 自暴自棄にもなったけど、こうして元気さ。
 いつも通りの俺さ。
 心に穴が開いてしまってるけど…なんとか埋めてやるさ。
 俺にはかえでがいる。
 さつきが生きていた証拠のかえでがいる。
 お前は、生きていたんだよ。
 たとえ短い一生だったとしても、一瞬だったとしても輝いていたじゃないか。
 だから、ここに俺がいて、かえでがいる。
 な、だからそんな心配そうな顔すんなって。
 一人じゃないから。
 お前がいるから。
 かえでがいるから。
 皆がいるから。
 そう、笑っていてくれ。
 笑ってくれ。
 その顔が俺は見たくて一生懸命だったんだから。
 その笑顔が見たくて、俺は頑張ったんだから。
 だから、笑っていてくれ。
 俺も笑っているから。
 お前が一番好きだったこの顔でいるから。
 辛くても、笑って見せる。
 苦笑いになるかもしれないけど、笑ってやる。
 これが俺の意地だ。
 うん、俺はお前の夫だからな。
 お前は俺の一生の妻なんだよ。
 そ、俺達は夫婦なんだから。
 何時までも、これからも。
 そして、ずっと。
 星になったお前は俺達を見下ろしてくれ。
 俺はゆっくりとゆっくりと時間をかけてそっちにいくよ。
 だから、待っていてくれよ。
 いつか、俺がそっちに行くときまで。
 いつか、かえでがそっちに行くときまで。
 まだまだ先だけど。
 うん、俺もお前のこと、忘れないからな。
 これからも、見守ってくれよ。

 俺はゆっくりと目を開けた。
 『先祖代々』と書かれた黒い光を放つ墓石。
 まだ…ここには…さつきしかいない。
 寂しいけど…待っていてくれよ。
 何時でも、来てやるから。
「お前が生きていた証はここにいるからな」
 いつのまにか眠ってしまったかえでを“おぶひも”から降ろす。
「ほら…ね」
 大切に育ててやるさ。
 お前と、俺の子供だからな。
 きっと美人になるよ、お前の子供だから。
 どっちに似るんだろうな、楽しみだよな?
 っと…やべ…泣きそうになってるじゃねぇか。
「心配すんじゃねぇ、俺は元気さ」
 空を見上げる。
 鳥が空を撫でる。
「また、来るからよ。待ってろよ」
 寂しくなったら、慰めてやる。
 だから、寂しくなったら慰めてくれよ。
 夏の日差しの中、かえでをおんぶしなおすと、俺は背を向ける。
 ゆっくりと歩き出した俺。
 ゆっくりと進む季節。
 途中で忘れていたことを想いだし、もう一度墓を見る。
「明日は、かえでの一才の誕生日だからな、忘れるなよ」
 精一杯の笑顔でそう言った。

初出: 2003年7月21日
更新: 2004年12月14日
原作: 鈴響 雪冬
著者: 鈴響 雪冬
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