掌編小説

Top > ウェブ公開作品 > 小説 > 掌編・短編小説 -掌編小説- > 風のある場所

丘の上の物語、白河蓮ストーリー、外伝

風のある場所

「暑いな」
「そうだね」
それにしても暑い。
「暑いぞ蓮!」
「僕に言われても~」
オレ達は今自転車で風を切っている。
だけど…
「やっぱり暑いぞ」
「暑いね」
だれだよ、サイクリングは風を切って涼しいとかいっていた奴は。
「ちくしょー!晶と薫もまきぞいにするんだった」
「あはは(苦笑)」
「この責任はとってもらうぞ、蓮」
「行くって行ったのは修じゃん」
いや…あれは
脅された…というべきじゃないのか?
包丁が飛んできたし…。
壁に突き刺さったし……。
貫通したし………。
はぁ~
「大丈夫、もうすぐ涼しくなるよ」
「ほんとか?」
「多分ね♪」
「おいおい…」

40分後
「ここだよ」
「ここか?」
学校がある丘の反対側。
途中で自転車を降りて、歩いて登ってきた。
「へぇ~こんなところが、学校の裏にあったなんて」
「どう?涼しいでしょ」
学校のある丘とはちょっと離れたところにあるこの丘。
風が通りぬけ、町の中とは違った空気があった。
「たしかにな」
「こっちに来てよ」
「おい、待てよ」
先に走り出す蓮の後ろを追いかける。
突然開けたところに出る。
「こっちこっち~♪」
さらに蓮は進む。
そこには…
物見台があった。
「修~上ってきてよ~」
「へぇ~景色が綺麗だな」
俺達の町から丘を挟んだところにある隣町
ここの丘からは遠くが見渡せる。
「これが、わびさびって言うんだよ」
「それって、なんか違うんじゃないか?」
「いいの。気にしない気にしない」
一陣の風が吹きぬける。
それまで貯まっていた疲れが吹き飛ぶ。
「気持ちいいな」
「うんっ♪そうでしょ?」
「あぁ、ここならまた来てもいいかもな」
「それじゃあ、また一緒に来よう」
「おう。スケッチブックでも持ってくるか」
「修って、絵書けたっけ?」
「ふっ…言うまでもないぜ」
「あっ、無理なんだ」
図星…
さすがだな…蓮…。

俺達は坂道を下り、家に戻る。

風…
新しく空気を運び、
古い空気を飛ばしていく。
新しい季節を運び
今までの季節を運んでいく。
全てをいれかえるかのように吹く風。
また、新しい日が風によって運ばれてくる…。

初出: 不明
更新: 2004年12月14日
原作: 鈴響 雪冬
著者: 鈴響 雪冬
Copyright © 2002-2004 Suzuhibiki Yuki

Misskeyにノート

Fediverseに共有