ReSin-ens

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第17章

【直哉】「…彩音……。彩音…………。彩音………!」
失ったものはあまりにも大きすぎた。
そして、その失ったものはもう戻ってこない。
【直哉】「すまん…。彩音」
【直哉】「俺のせいで………」
でも…彩音が望んだ事…。
彩音にとってはこれが幸せなんだよな?
でも…そんな事で…割りきれる訳無いじゃないか…。
だって…だって…。
もう…二度と会う事は出来ないんだぞ…!
今まで見たいに…一緒に話したり…。
二人で一緒の時を過ごしたり…。
皆と一緒に遊んだり…話したり…。
【直哉】「彩音ぇぇぇぇぇぇえええええっ!!」

===SE・ドア開く===

【医師】「なんと言うことだっ!」
俺の目の前で医師が心配蘇生をはじめる。
看護師も続々と掛けつけてくる。
人工呼吸器具…血圧計…心電図…ありとあらゆるものが目の前に広がる。
それを見ていると…なんか…馬鹿な気がしてきて…。
もう…無駄だと………。
無駄な事なんだと………。
………………………駄目だ…押さえられない…!
俺の中で何かが弾ける…。
このままだと………。
俺は―――っ。
ここだと…駄目だ………皆まきこんでしまう…。
もう…人を殺したくないんだ…。
そうだ…俺が居なくなれば…もう…あんな悲し思いをしなくてもすむんだ…。
昔の…公園での出来事…。

===公園フラッシュバック===

走る。
ものすごい勢いで走る。
景色が流れるように後ろに滑りこむ。
階段…。
1段飛ばしでも時間がもどかしい。
階段…。
あと…後少しで…。
目の前にある扉…。

===SE・ドア開ける===

まだ…間に合う…。
今ここで俺が死ねば…力の暴走は止められる。
力によって誰も犠牲にする事なく…。
今の俺には…この暴走は…止められない…。
あの時…あの夜の時は…何とか押さえられた。
目の前に彩音が居て…応援してくれたから…。
でも…今は…。
彩音…ご免な…。
俺も後を追うよ。
天国で会えたら…会おうな…。
今、そっちに向かうから…。
もう…この世界に俺が存在する意味も無いし…存在してはいけないから…。

トゥルーエンド

【直哉】「がぁあああっ!」
俺を襲う力…。
これが弾ければ…本当に全て…失ってしまう…。
彩音を支えてくれた主治医やあの看護師…。
全て…。
早く…早く…。
俺はフェンスを乗り越える。
飛び降り防止のための高いフェンスですら、今の俺には関係ない。
次第に散らばっていく俺の意識の破片…。
自分自身が遠くにいってしまう…。
どんなに掴もうとしても…それはもう…掴めない。
早くしないと…。
あの時とは…比べ物にならない…。
意識の奥底…本能だけが俺に働きかける…。
このままだと駄目だと…。
このままだと…駄目?
何が…一体何が…駄目なんだ…?
俺がここに居る事?
そう…ここに俺が居ると時期に力が暴走する…。
だから…今から死ぬんじゃないか…。
暴走する前に俺が死ねば全ては助かる。
もう…彩音は失ってしまったけど…。
これ以上…犠牲を増やす訳には行かないから…。
だから…。
でも…なんなんだ…この気持ち…。
全てが………俺を包んでいくような感じ。
【?】『自分を信じろ』
誰だ…そんな事を言うのは
【死神】『自分を信じると誓っただろ?』
貴様か…。
全ての元凶っ!
お前のせいで…俺は…俺は…。
俺の力がなんだ…。
全てを失うだけじゃないか…っ!
こうなるんだったら…あの時に死んでおけばよかったじゃないか…。
そうすれば…何も失わなくてすんだのに…。
畜生ぉぉぉおおっ!!
俺は…俺はなんなんだよ。
何も守る事も出来ないんじゃないか。
いつも助けられてばっかりだったじゃないか。
最後ぐらい…大切な人を守りたいっ!!
たとえ…この力…暴走しても…俺は彩音だけは守りたいっ!!
それが無理な願いでも…。
それが無理な事でも…。
俺は彩音を守り続ける…。
刹那、俺を包み込む光…。
ヤバイ…。
来るっ!!
早くしないと…。
!?
でも…その光は…とても暖かくて…。
なぜか優しくて…。
あの時…昔の公園の時とは…違っていて…。
冷たくなくて…。
冷酷じゃなくて…。
そう………優しい…。
これは…。
俺は…。
………。
【直哉】「自分を………自分自身を信じろ!」
これが…俺に与えられた最後のチャンスなら…、受けてやる…。
何が起こっても俺は…もう…後戻りはしない…。
【直哉】「はぁぁぁぁあああああああっ!!!!」
自分自身から発せられる力…。
俺と言う殻を突き破り…全てを貫く。
そう…昔と同じ…この感覚…。
でも…違うのは…その暖かさ…。
なぜか…全てを守る事が出来てしまうような優しさ…。
死神…今までありがとうよ…。
そして………さようなら!
今の俺には全てがある。
【直哉】「全てを守って見せる…大切な人も…」
【死神】「なら…見せてみろ…私に…」
【直哉】「言われなくてもやってやる!」
【死神】「そうだ…自分の思うまま…」
【直哉】「俺のこの力…全て…彩音に捧げる…」
【死神】「そうか…なら…」
【直哉】「この力…新たなる力にして………っ!」
【直哉】「うがぁぁぁぁああああっ!!」
【死神】「なっ!?」
何が人の生命を奪う力だ…。
1つの事実には2つの側面があるものなんだよっ!
貴様が俺を使って彩音の生きる力を奪うなら…。
俺自身が…お前の生きる力を―――。
俺の…好きな人に…力が作用するだと…っ?
何をいっているんだ………今の俺のこの力は………俺の好きな人のために作用するんだよ!
元々…サイコキネシスの能力がある事を…忘れるなっ!
だからっ!
やる事は…1つしかない…。
この想い…力となり………。
全てを………守ってくれ………。
そして―――――――――っ!
死神…っ! お前に与えてきたお前自身の生きる力………彩音から奪ってきた生きる力………全て………返してもらう!
俺の全力の力………。
誰も今まで守ってあげられなかったけど…今なら………。
運命という言葉で片付けるんじゃなく、自分で道を見つけて歩んでいくからっ!
【直哉】「―――っ!!」
【直哉】「ぐわぁあああ゛っ!!!!」
【死神】「なぁぁぁああああああああ゛あ゛あ゛っっっ!」

……
………
深い夢はそこで揺らめく。
手を伸ばしても届かない…。
完全にバラバラになる俺の意識…。
意識の奥………全てが消えてゆく。
彩音っ!!
ようやく見つけだしたその失われた言葉だけがかすかな余韻を残し―――
もう…何も考える事が出来なくなった…。

……
………
…………
……………
………………

制作: 2002年
初出: 2003年11月23日
更新: 2005年4月27日
企画: 詩唄い
著作: 鈴響 雪冬
制作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2002-2005 Suzuhibiki Yuki

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