Top > ウェブ公開作品 > 小説 > 長編小説 > ReSin-ens > 本編 -第8章-
【直哉】「…今何時だ?」
既に時計の針は11時をさしていた。
【直哉】「たまには…いいかもな」
思いっきり寝坊。
まぁ、今日は休みだし。
【直哉】「とりあえず…飯」
…
……
………
いつものようにトースト。
たまには上に載せるものを変えてみようと思い、コロッケを買ってきたが…。
【直哉】「やっぱり…やめよう」
なんか、嫌な予感がした。
とりあえず、マーマレードでいいや。
…
……
………
【直哉】「…忘れてた…」
絵だ…。
【直哉】「途中半端でやめるのはだめだよな」
【直哉】「彩音に見せないと行けないし…」
【直哉】「さて…それじゃあやりますか」
俺は部屋に戻る。
【直哉】「もうすぐ完成だな…」
目の前に広げられるスケッチブック。
頭の中にあの景色を再現する。
確か…。
…
……
………
【直哉】「何かが…足りない」
もう全て描き終わっている。
樹も…街も…向こうの山も…空も…。
一体何が足りないと感じるんだろう。
風景において…もうこれ以上必要ない…。
【直哉】「なんなんだろうな」
確かにあの時彩音が木の下に居た。
でも下書きの段階からカットしていた。
むしろ描こうともしなかった。
今までだって風景画で人を描き入れた事はない。
その場にいたとしてもわざとはずしてきた。
でも………足りないと感じるのは彩音が入っていないからだろうか…。
【直哉】「まぁ…いいか」
【直哉】「もう…こんな時間か」
時計は既に夜7時をさしている。
【直哉】「とりあえず…飯」
いつかと同じ台詞を繰り返し、俺は夕ご飯の準備に取りかかった。
…
……
………
【直哉】「風呂にでも…入るか」
少しばかり期待を抱いて水明温泉に向かう。
【直哉】「しかし…なんで家の風呂じゃないんだろうな」
以前は家の風呂に入っていた。
ここ最近は水明温泉も結構行く。
やっぱり…あそこは湯冷めしないからな…。
それに………家の風呂は使うと洗わないといけないし。
…
……
………
【直哉】「よぉ」
【七夏】「なんだ、居元君か」
【直哉】「なんだ、ってことは無いだろ?」
【七夏】「今日は賑やかになる…とだけいっておこう」
無視して、話進めてるし…。
【直哉】「賑やかって?」
【七夏】「私が言えるのはそこまでだ。ほら、入った入った」
と、いいながら男湯の暖簾を指差す。
【直哉】「じゃあ、遠慮なく」
…
……
………
着替えを済ませ、扉を開く。
相変わらず、人は居ない。
何が…賑やかなんだ?
その疑問も、すぐに打ち消される。
【女の子】「きゃあぁ~~、やめてくださいよぉ~、萌先輩~」
【女の子】「恥かしいですよ…」
同時に水の音(SEでいれてもいいと思われる)
………はぁ…。
彩音に…萌…と言う事は…梨香もか…。
【萌】「ほら、揉めば大きくなるっていうし」
破廉恥極まりない発言だ。
【彩音】「大丈夫ですよ~。あたしは」
【萌】「しかし…見た目より小さいわね」
【萌】「服を着るとここまで隠れるものなのね…。彩音は厚着しすぎ」
【萌】「見たところ………7…6…77かな?」
【萌】「しかも…全体的に痩せ過ぎ」
…何やっている事か…。
【梨香】「やっぱり、そんな趣味があったのですか」
いっちゃった…。
【萌】「なんですってぇえ゛~?」
…予想通り。
【梨香】「むきになることろがますます…」
【萌】「きゃあ゛ぁぁぁ!」
何かが弾けるような音と共にしばらく静かになる。
【彩音】「えっと…萌先輩? 梨香先輩?」
【萌】「直哉! あんたいるんでしょ? 早く何とかしなさい」
【梨香】「そうです、何か言って下さい」
【彩音】「直哉先輩が居るのですか?」
【直哉】「俺にどうにかしろって言われても…」
彩音への返事も兼ねて出来るだけ大きな声で返す。
【梨香】「そうよ、どうにかして下さい」
【萌】「復活するの早いわね」
【梨香】「だてに長い付き合いではないです」
【萌】「あっ、直哉。ついでだからリンス貸して」
【直哉】「今度はリンスか?」
【萌】「ぐだぐだいわないで、さっさと貸す」
【梨香】「脅迫…」
【萌】「(プチ)」
【萌】「浄化…してあげる」
…嫌な予感が…。
【彩音】「直哉先輩! 早く何とかして下さい」
【直哉】「何とか…と言われても」
【萌】「半永久的にアンキバスの世界へ封印してあげる」
【梨香】「…本当の力を見せてあげます」
【萌】「私に逆らうとでも言うの?」
【梨香】「窮鼠猫を噛む、と言いますわ」
【彩音】「直哉先輩~」
このままだと…最終戦争が起こるかも…。
大参事世界大戦…。
つまらん…。
しかし…どうしよう…。
《リンスを投げ入れて火に油を入れる》
【直哉】「静かにしろ!」
俺はリンスを女風呂に向かって投げ入れた。
カッコーーーン
【萌】「イタッ」
歴史は繰り返されると言う言葉にのっとって、見事にあたったらしい。
【萌】「あんた! 同じ手を人が食らうと思う?」
【梨香】「あさはか…と言うものです」
【萌】「梨香…私が許可を与えるから、今すぐ直哉を殺ってしまいなさい」
【梨香】「わかりました。ではしばらくお待ち下さい」
【萌】「えぇ」
【梨香】「佐伯梨香、萌の命において、直哉を抹殺する。せいっ!」
声と同時に風呂場の男女を別ける壁を飛び越えてくる。
【直哉】「まじ!?」
【梨香】「くらえっ!」
衝撃波のようなものを食らい、俺は後ろへ飛ばされる。
【梨香】「…最後はどうか幸せ…き………を」
後半の声は聞き取れなかった。
…
……
………
【彩音】「………先輩? 直哉先輩?」
闇の向こうから彩音の声。
あぁ…俺はどうなったんだろう…。
【彩音】「直哉先輩?」
【直哉】「彩音?」
【彩音】「まだ動いてはいけません」
目を開け、視界が晴れてくるとそこには彩音の顔があった。
【直哉】「彩音…か」
【彩音】「はい」
【直哉】「俺はどうしたんだ?」
【彩音】「死にました」
【直哉】「え!?」
【彩音】「冗談です」
と、笑いながら言う。
冗談じゃない…。
あいつらなら、本気で人を殺せるだろうし…。
【彩音】「ところで、大丈夫ですか?」
【七夏】「ほらよっ」
いきなり頭に冷たいものがぶつかる。
【七夏】「冷凍庫で冷やしたタオルだ」
【直哉】「冷凍庫………って、凶器じゃないかよ!」
叫びながら起き上がる。
【七夏】「なんだ、全然ぴんぴんしてるじゃん」
【直哉】「死んでたまるか! ところで萌さん達は?」
【七夏】「萌はまだ風呂。梨香さんはもう上がってる。ほら、あそこ」
七夏が指を差した方向には梨香さんが居た。
丸くなって眠ってる…。
胎児姿勢と言う奴だ。
ほんと、狐だな…。
【彩音】「直哉先輩…もう大丈夫なのですか?」
【直哉】「あぁ」
【萌】「ふぅ~」
声のした方を見ると、萌さんが上がってきたところだった。
【萌】「あら、生きてたの」
【直哉】「残念ながら」
【七夏】「まぁ、人の温泉で何騒いでるのやら…」
【萌】「すみません。直哉、結構楽しかったわよ」
【直哉】「出来れば遠慮したいけどな」
【萌】「彩音の膝枕はどうだった?」
【直哉】「膝枕?」
ちょっと赤くなる彩音。
まさか…。
【萌】「はいはい、よ~くわかったわ。それじゃあ、私は梨香を連れてかえるから」
【直哉】「それじゃ」
…
……
………
【直哉】「萌さんたちも帰った事だし…俺も帰るよ。彩音はどうするんだ? 途中まで送ってくか?」
【彩音】「そうして頂けると嬉しいです」
…
……
………
【直哉】「しかし…、彩音の両親はどうなってるんだ?」
【彩音】「? どういう意味ですか?」
【直哉】「いや、普通、こんな夜だったら1人で温泉には送らないだろう」
【彩音】「二人とも今日はたまたま仕事に出ているのです」
【直哉】「そうなのか?」
【彩音】「はい。ですから人の多いところに行こうと思ったので、温泉に…と言う事です」
【直哉】「あそこの温泉を選ぶのはどうかとは思うけどな」
【彩音】「でも、今日は賑やかでした」
【直哉】「そうだな」
温泉での出来事を思い出してみる。
頬が緩んでしまった。
【直哉】「それでも、危ないと思わないか? こんな夜道」
【彩音】「まぁ、私が襲われる事は無いでしょうから」
《まぁ、遼風を襲っても意味は無いか》
【直哉】「まぁ、彩音を襲っても意味は無いか」
【彩音】「あ゛ぁ~、酷い事言いました」
【直哉】「本当の事をいったまでだ」
【彩音】「酷い………です…」
どうやら、かなり傷ついたらしい。
冗談だと言うのに…。
【直哉】「冗談だ」
【彩音】「本当ですか?」
【直哉】「当たり前だ」
【彩音】「では、襲われた時は助けて頂けますか?」
《もちろん………………………いや………俺が襲う………》
【直哉】「もちろん………………………いや………俺が襲う………」
【彩音】「………………………」
俯いてしまった。
しかし…顔が赤くなっている気がする…。
これって………誉め言葉?
まさか…ね…。
…
……
………
【彩音】「それでは、あたしはこの辺で」
【直哉】「ここでいいのか?」
【彩音】「はい。後100メートルも無いので」
【直哉】「そうか。それじゃあ」
【彩音】「ありがとうございました」
【直哉】「図書館にでも行ってみるか」
というより、彩音に会いに行くか…と言う事なんだろうけど…。
…
……
………
【彩音】「直哉先輩? 本…好きになりましたか?」
【直哉】「まぁ、はじめは暇潰しだったけどな」
【彩音】「きっかけより、結果です。それが自分に何をもたらしたか…それが重要です」
【音瀬】「それにしても…最近洋書の入荷が少ないよ」
【彩音】「そう…なの?」
【音瀬】「うん」
【直哉】「そういえば、ここは洋書のスペースもあったな」
【彩音】「はい。フランス、イタリア…主に北欧の本が主流ですが」
【音瀬】「最近だとフランスの本も入りにくいし…」
【直哉】「ん? どうしてフランスなんだ?」
【音瀬】「私、フランスの作品は原文で読めるんですよ」
【直哉】「? つまり、フランス語が読めると言う事か?」
【音瀬】「はい♪」
【直哉】「マジか!?」
【彩音】「紗はフランス語はとても上手いですから」
『そんな事ないよ~』と言いつつ照れる音瀬。
【音瀬】「彩ちゃ~ん…誉めすぎ~」
だからって…抱きつくなよ…。
【直哉】「じゃあ…好きな作品とかもあったりするのか?」
【音瀬】「探偵小説とかは結構読むし…特に、『Claude LEBLANC』の作品は好きだね」
【彩音】「でも、それって探偵小説とは少し違うと思うけど…」
【音瀬】「そんな小さい事気にしない♪ 推理と言う部分は合ってるでしょ?」
【彩音】「うん…」
段々会話に付いて行けなくなってきた。
【直哉】「ところで…誰なんだ? その…ルブラン? って人は」
【音瀬】「えっとですね、『ルパン』は知ってますか?」
【直哉】「あぁ」
【音瀬】「日本の映画では無いですよ」
【直哉】「違うのか?」
【音瀬】「怪盗アルセーヌルパン、ルブランの代表シリーズです」
【直哉】「ルパンの本家みたいな感じか?」
【音瀬】「まぁ、そんなものです。そして、そのシリーズを書いているのが『Claude
LEBLANC』と言う人です」
【直哉】「へぇ~」
【彩音】「その人の作品にはほとんど女の人が出てきてアルセーヌルパンがその人を助けると言う事がストーリーの主軸です」
【直哉】「恋愛っぽいところもあるのか」
【音瀬】「そこがいいんです」
【音瀬】「ただの怪盗じゃなく、怪盗紳士であるルパンはとても素晴らしい人ですっ!」
【直哉】「随分と力説だな」
【彩音】「紗のお気に入りですから…。全シリーズ原文で読破していますし…」
【直哉】「全部!?」
【彩音】「はい」
【音瀬】「ただ単に好きなだけですよ」
【直哉】「聞いてもわからないと思うけど、お勧めとかあるのか?」
【音瀬】「そうですね…。『l'ile Aux Trente Cercueils』『8・1・3』『Le Cercle Rouge』ですね」
【直哉】「俺…フランス語はわからない」
【音瀬】「順番に、『30の棺桶の島』『8・1・3』『赤い輪』ていう作品です」
【彩音】「児童書の小学校高学年の場所に、日本語訳された作品があります」
【直哉】「小学校高学年?」
【彩音】「でも、本は読んだ時のその人の年齢や思考、心情によって捕らえ方が変わります。今読んでも十分面白いと思いますよ」
【音瀬】「さすが彩ちゃん。上手い事言う!」
【彩音】「そうでもないですよ♪」
【直哉】「しかし、流石文芸部だな…」
【彩音】「中村先輩には到底及びません」
【直哉】「中村先輩って…部長か?」
【彩音】「この図書館に寄付された本の3割は中村先輩のものです」
【直哉】「何冊あるんだ…一体」
【音瀬】「確か…中村先輩の本だけで200冊ぐらいだったかな」
【直哉】「200冊!?」
【彩音】「はい」
【直哉】「凄いな…」
【彩音】「小説家志望らしいです。あたしは一度読ませてもらいましたが…凄かったです」
【直哉】「どんな風に?」
【彩音】「えっと…口では表現できません…。でも文章が完成されていると言うのでしょうか…とても親しみ安い文章ですよ」
【音瀬】「中村先輩に作文とか小説を書かせたら、この学校で右に出る人は居ないね…きっと」
【直哉】「そんなに凄いのか?」
【彩音】「はい。本の事もよく知っていますし…。タイトルを聞けばこの図書館のどこにあるかすぐ教えてくれます」
【直哉】「どんなCPUつんでいるのか…」
【音瀬】「そうだね…Pentium4…かもしれないね」
【彩音】「中村先輩は人間ですよ…」
【音瀬】「あっ…」
どこからともなく聞いた事がある音が鳴り響く。
【彩音】「ちょっと…『図書館ではマナーにしておいて』と、いっていたのに…」
どうやら音瀬の携帯の着メロだったらしい。
【音瀬】「ごめん」
【直哉】「もしかしたら今の曲?」
【音瀬】「『貴方への花束』です」
【直哉】「やっぱり」
【彩音】「いった通りですよね」
【直哉】「あぁ。本当に好きなんだな、その曲」
【音瀬】「はい♪」
【直哉】「ん? 『しておいてと、いっていたの』…つまり前にも同じ事があったのか?」
【彩音】「はい。紗は―――」
【音瀬】「ちょっと~、彩ちゃんだってたまに忘れているじゃない」
【直哉】「いや、忘れるもなにも、学校ではずっとマナーになってるんじゃないか?」
【彩音】「色々あってマナーを解除した時があって…その時に…」
【音瀬】「あれは確か…彩ちゃんに着メロ送った時だよね」
【彩音】「うん…。ご丁寧にも『貴方への花束』をね」
【音瀬】「まぁ、これでおあいこ」
【彩音】「絶対…何かが違う気がする…」
【直哉】「しかし、電話に出なくても大丈夫だったのか?」
【音瀬】「少しぐらいなら待ってくれますから」
【彩音】「流石、いい人ですね」
【音瀬】「それを言うなら、彩音だっていい人見つけたじゃない」
…恥かしい。
二人黙って赤くなってしまう。
【中村】「遼風、音瀬。そろそろ帰った方がいい」
【彩音】「はい」
【音瀬】「そうですね」
【音瀬】「どうしました? 中村先輩。顔が妙に…」
【中村】「あぁ、小難しい問題にぶつかってな」
【音瀬】「どんな問題ですか?」
【中村】「ん? あぁ、この理論を証明しないといけないのだが…」
そう言って中村先輩は本を音瀬に見せる。
表紙が俺に見えるようになる。
『特殊相対性理論と一般相対性理論を応用した工学技術における定義』
…どんな本だよ…。
そもそも、相対性理論を工学技術に応用できるのか?
【中村】「ここの部分がよく分からないんだ…。理解しようとしても中々…」
【音瀬】「この場合は…『特殊相対性理論』の方…ですね…」
【中村】「あぁ。特殊相対性理論は、光速度が座標系の速度によらず常に一定値をとる事実をもとに、互いに等速直線運動をしている観測者に対し、すべての物理法則が同じ形で成立するよう定式化したものだろ?」
【音瀬】「そうですね…。『一般相対性理論』の方は、四次元の新しい時間・空間構造をもたらしたものだし」
【中村】「あぁ。ここまではわかるんだが、問題はこの部分なんだよ」
中村先輩は音瀬に見せていた本に指を置く。
【音瀬】「う~ん…。特殊相対性理論を使うならやっぱり『慣性の法則』を応用して…『ニュートンの運動の第一法則』を使って………この値をこれに代入して…この式はまとめられるからまとめて…こうして…ここを移項して…」
【中村】「なるほど。この値をこっちにいれてしまえば、計算が楽だな…」
【音瀬】「そうですね。それなら、これで出た値をこの式にいれて…計算をすれば…」
【中村】「おぉ~…なるほどな。これなら『慣性誘導』にも使えたりするわけなんだ」
【音瀬】「そう言われればそうですね…」
…なんか頭が痛い…。
【直哉】「なぁ、彩音。慣性誘導ってなんだ?」
俺は小声で彩音に聞いた。
【彩音】「慣性誘導とは、ジャイロと加速度計によって慣性の加速度を測定して、速度、飛行距離を算出し、弾道の誤差を自動的に修正するものです」
【直哉】「はっ?」
【彩音】「ミサイルの誘導方式の1つです」
【直哉】「…そうか」
なんか、どうでもよくなってきた。
【中村】「ありがとう、音瀬。長居させてしまったな」
【音瀬】「私は大丈夫だよ。それよりも…中村先輩?」
【中村】「ん? どうした?」
【音瀬】「…立ち絵…無いんですね」
【立ち絵無しキャラ】「………………音瀬…そのうち、放課後の特別授業だからな」
【音瀬】「えっ?」
【中村】「じゃ」
手を挙げ笑顔で立ち去っていく中村先輩。
他の部員にも同じように声を掛けている。
【直哉】「さて、俺もそれじゃあ帰るか」
【音瀬】「それでは私はお先に失礼するね」
【彩音】「それでは」
【直哉】「じゃあな」
【音瀬】「うん♪ バイバイ」
音瀬は図書館から出ていった。
【直哉】「それじゃあ、帰るか。送っていくよ」
【彩音】「すみません。いつも送って頂いて」
【直哉】「当然の事だって」
【直哉】「ふぅ~。やっぱり、ここの温泉はいいなぁ~」
温泉から出てきた直後、俺は外で伸びをした。
【直哉】「さて、家に帰るか」
…
……
………
【女の子】「いやっ………」
【直哉】「ん? なんだ?」
後ろの方から何かが聞こえた気がする。
後ろを振り返る。
あそこは…緑地?
いつの日だったか、星を見ていると彩音が言っていたな…。
………さっきの声…。
何なんだろう…。
妙な胸騒ぎを覚えた。
もし…彩音の声だったら…。
…
いってみよう。
何も無ければ、それでいい。
…
……
………
【男A】「いいじゃねぇかよ」
【女A】「やっ…止めて下さい」
奥の方から声が聞こえる。
木もある上、暗い夜なので奥の方はよく見えない。
俺は、そーっと近づいた。
【男B】「ほら、どうせ、こんなところには誰も気やしないさ」
【男C】「俺に任せてくれよ」
そういった男が、女の人の口を押さえつける。
【男D】「ほら、大人しくしろよ」
そういった男が、女の人の足を押さえつけた。
完全に行動の自由を奪われた。
自由が取れなくなった女の子を男は見下ろす。
【男D】「どうぞ。好きに犯してやってください」
………
【女の子】「やめてっ!」
口に当てられていた手をのけて女の子の最後の叫び声。
その声に俺は聞き覚えがあった。
【直哉】「彩音…?」
一瞬自分の耳を疑った。
俺は暗闇を凝視する。
月明かりに照らされた顔は、彩音そのものだった。