ReSin-ens

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第三章

10月27日

*before_ayane_04

今日は、一人で学校に登校していた。
まぁ、茜は来る日と来ない日があるからな…
理由は知らないけど。
いつもより早く起きてしまい、結果いつもより早く出る羽目になった。
【直哉】「今日はゆっくりとコーヒーを飲めて満足したしな」
独り言になる俺。
いつもは茜がいるからな。
そう言えば最近はよく家に来ているからな…
10月になったら来るようになっていたし。
でも… 寒ぅ!
【直哉】「初雪は近いのかな。風も寒くなる一方だし」
北風は身をふるわせるのに十分な寒さである。
早く学校に行こっ!
走っていくと生徒の数が多くなってきた。
学校に近づいている証。
その生徒の中に紛れて見たことがある顔が二つ。
茜と義明だ。
何か楽しそうに話しているな。
どうしよう… 声をかけてみようかな… ?

選択肢
「声をかけない」
「声をかける」

≪声をかけない≫

まぁ、いい。
俺はそう決断し、一人で登校を続けた。

;『直哉の紗との出会い。茜、はじめて遼風と紗に出会う』
;昼・学食に直哉と茜が向かっていく途中

【直哉】「ん? あれは遼風さんだ」
【茜】「遼風さん?」
【直哉】「そういや、茜が遼風さんと会うのは始めてか…。俺の知り合いだ」
【茜】「直ちゃんにも、女の子の知り合いがいたんだぁ~」
【直哉】「おい…」
【茜】「ちょっとした冗談だよ」
色んな意味で、その冗談はきつい。
ん? どうやら遼風さんもこっちに気がついたらしい。
【遼風】「こんにちは、居元先輩」
【直哉】「こんにちは、………っと、こいつは月詩茜。なんていうか…まぁ、俺の幼馴染だ」
【茜】「はじめまして、遼風さんに…え~っと…そっちの人は?」
【女の子】「私は、音瀬紗。好きに呼んでください!」
【茜】「それじゃあ、音瀬さんに遼風さん………でいいかな?」
【遼風】「はい」
【音瀬】「はい!」
【直哉】「っと、俺こそはじめまして。音瀬さん」
【音瀬】「はじめまして♪ 彩ちゃん、この人は?」
俺に直接聞けよ…と突っ込みたくなった。
【遼風】「この方は、居元直哉先輩。ひょんなことで知り合いました」
【音瀬】「どーせ、又彩ちゃんの方から声を掛けたんでしょ」
【遼風】「うん…」
どうやら、気になる人には声を掛ける性格らしい。
外交的というか、無邪気というか…。
そのまえに…彩ちゃんって…。
彩音の彩ってことか。
そのまま、名前と化してるよな。
【遼風】「それでは、あたしたちはこれから屋上でお弁当なので…」
【直哉】「そうか、それじゃあね」
【遼風】「はい」

……
………
【茜】「大人しそうな人だね、遼風さんって」
【直哉】「あぁ。見た目も性格も音瀬さんと正反対みたいだし…」
【茜】「うん。あっ、それより、早くしないと売りきれちゃうよ」
【直哉】「あぁ、そうだな」

10月30日・土曜日・

*before_ayane_03
;昼頃、食材の関係で外で食べることにした主人公は喫茶店EveryDayに入る
;F2によるフラグせいイベント。

【店員】「メニューになります」
そう言いながら店員がメニューを差し出すと、その場を立ち去っていった。
メニューを開く。

……
………
気になるメニューがあった…。
『長いも定食』…。
【直哉】「なんだ…? これ…」
どうしよう………。
ちょっと悩む。
考えていると見知った顔の女の子が入ってきた。
遼風さんだ。
一人…みたいだけど…。

選択肢
「声を掛ける」
「声を掛けない」

《声を掛ける》

ちょうど悩んでいたところなので、聞いてみることにした。
【直哉】「遼風さん」
他の客に迷惑にならない程度だが、遼風さんには聞こえるような声の大きさで呼ぶ。
声を掛けられた遼風さんがこっちを振り向く。
【遼風】「あっ…居元先輩」
そう言いながらこっちへ歩いてくる。
【遼風】「相席…よろしいのですか?」
【直哉】「あぁ。俺が呼んだんだからな」
【遼風】「はい」
ちょこんと彼女が椅子に腰掛ける。
フワリ…という表現がぴったりのような動きだった。
【遼風】「どうしたんですか?」
【直哉】「いや、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
【遼風】「あたしで役に立てばいいですけど…」
【直哉】「ちょっと、これを見てくれ」
そう言いながら俺はメニューを遼風さんに見やすいように反転させて置き、『長いも定食』があるところを指で指した。
【遼風】「これって…」
彼女は困惑した顔を一瞬見せたが、すぐに明るい顔になると、
【遼風】「これ、美味しいですよ♪」
と言った。
【直哉】「食べた事あるのか?」
【遼風】「はい♪ これは…本当にそのままです。ご飯もセルフサービスでついてきます」
【直哉】「なるほど…。なんとなく分かった気がする…」
【遼風】「ところで、居元先輩は…昼食でも食べに来たのですか?」
【直哉】「まぁ、そんなところだ。食材を買い忘れてな」
…。
前に一人で来たときとは違う充実感があった…。
遼風さんが…いるからだろうか…。
【直哉】「注文決まったら好きに頼んでいいよ」
俺は考えを断ち切ることにした。
【遼風】「えっ……でも…」
【直哉】「いいんだ。俺が呼んだんだから」
【遼風】「………それでは…私はこれで」
彼女が指を差した先には手軽な『ランチセットB』があった。
値段は600円でサンドイッチ、サラダ、ポテトフライと珈琲の飲み放題がついてくるという本当に軽食だった。
ちなみにAのほうはご飯がメインだ。
【直哉】「それだけで………いいのか?」
【遼風】「はい。元々小食ですから…」
【直哉】「そうか」
【遼風】「でも、『食べろ』と言われれば本気で食べますよ」
と、笑いながら言った。
【直哉】「いや、それは止めてくれ」
あまり見た目からは食べそうに無いのだが…。
【直哉】「俺は…これにするか…」
『ホットケーキセット』500円と前と同じ『コロンビア豆の珈琲』300円。
【遼風】「あのぉ…、『ホットケーキセット』には珈琲はついてくると思うのですが…」
【直哉】「でも、別に頼んだ方がやっぱり美味しいんだ。どうせついてくるのは『アメリカン珈琲』だし」
【遼風】「珈琲…好きなのですか?」
【直哉】「まぁな」

……
………
注文を終えると彼女はバックからブランケットを取り出して自分の膝に掛けた。
【直哉】「寒いのか?」
店内は暖房が入っているためそれほど寒いわけではない。
【遼風】「はい…。低血圧ですから…朝とかも全然…」
【直哉】「へぇ~」
一瞬見た目通りだと思ってしまった。
【遼風】「居元先輩は朝は強いのですか?」
【直哉】「ん~。強い方ではないけど…まぁ、普通ぐらいだろうな」
そんな事を話していると、店員が頼んだメニューを持ってきた。
【遼風】「それでは、頂きます」
【直哉】「頂きます」
【遼風】「ところで、居元先輩は珈琲が好きって言いましたけど…豆などにもこだわっているのですか?」
【直哉】「そうだな。やっぱり産地ぐらいは気になるかな…。味も全然違うし」
【遼風】「私の両親も珈琲はよく飲みますけど…どこでも売っているような特売品です」
【遼風】「でも…面白そうですね…。ちょっと教えてくれますか?」
【直哉】「ん? どうして?」
【遼風】「なんとなく…ですけど、面白そうなんです。それに、今読んでいる本で『美味しいコーヒー珈琲のいれ方』というのがあるんです」
【遼風】「内容は、恋愛小説です…ね。コーヒーが深く関わってくる…というわけでもないのですが、一応知っておいても損は無いと思うんです」
【直哉】「へぇ~」
【遼風】「居元先輩がよろしければ…ですけど…」
【直哉】「俺は構わないよ」
【遼風】「ありがとうございます」
【直哉】「しかし…俺よりマスターの方が………」
【遼風】「マスター?」
【直哉】「あぁ、マスターって言うのは、俺のよく行く珈琲専門店のマスターのこと」
【遼風】「珈琲専門店…ですか」
【直哉】「まぁね。まぁ、どこにでもある感じだけどな」
【遼風】「そうなんですか?」
【直哉】「まぁ、店を経営している人が普通じゃない…っと、話を戻すか」
【直哉】「えっと…珈琲の淹れ方でいいのかな?」
【遼風】「ちょうど、豆の話をしていたので、豆から…でいいですか?」
【直哉】「豆の話か…。珈琲の豆は産地によってその名前が違うのは知ってるよね」
【遼風】「キリマンジャロ…とかは商品名にもなっていますし…」
【直哉】「そうだな。他にもケニアとかブラジルとかいろいろある」
【直哉】「そうして山地の気候によっても珈琲の木の種類によっても味が変わってくる。その中で自分の1番好きなのを選ぶことが出来るのが珈琲なんだ」
【遼風】「だから、ここのお店は豆が選べるのですか…」
【直哉】「そうだな。酸味が好きな人は『トラジャ豆』、コクが欲しい人は『ブラジル』苦いのが好きな人は『ハワイ』の豆を選んだり…」
【直哉】「あくまでも、代表的な例だから、こうとは限らないし、淹れ方とかブレンドにもよる…」
【遼風】「豆だけでも結構奥が深いんですね…」
【直哉】「まぁ、これ全部、マスターの請け負いだけど…」
【遼風】「それでも、すごいと思いますよ」

……
………
そう言えば、結構遼風さんって………小さいよな。
全く持って失礼な考えだ…。
でも…柚木先輩よりは…おおきいか。
本人に知られたら蹴りだけじゃすまないだろうけど…。
【遼風】「居元先輩? 食べないのですか」
【直哉】「あっ、いや、食べるよ」
どうやらふけていたらしい。
俺はそこまで考えると、食事に専念した。

……
………
【彩音】「すみません、本当におごってもらって…」
小さいのに、ますます謙虚になってしまっている。
【直哉】「いいって」
俺は本心から言った。
【彩音】「………ありがとうございます。今度何か、お礼でもさせてください」
【直哉】「気にしなくていいって。それじゃあ」
【彩音】「はい。それでは」

11月1日

【直哉】「さて…帰るかな」
俺は鞄に道具をしまうと教室を出た。
誰にも挨拶されることなく…。
まぁ、これでいい。

……
………

;■玄関■

【直哉】「っと」
下駄箱から靴を取ると俺は中ズックをしまった。
【遼風】「こんにちは、居元先輩」
【直哉】「こんにちは」
また…か…。
俺から話しかけることはなくても、遼風さんからは話しかけてくる。
何が楽しいんだろうな。
【遼風】「今日は寒いですね」
【直哉】「あぁ」
無愛想な返事。
自然に会話も重くなる。
【遼風】「寒いときはお風呂ですね」
必死に彼女が会話を盛りたてようとしている…。
そんな健気な姿が可哀相に見えてくる…。
まぁ、いいか。
【直哉】「そういえば、茜はお風呂が好きだったな…」
【遼風】「そうなのですか?」
俺はそんな空気をかき消すために茜の話題を振った。
【直哉】「あぁ…。女の人ってお風呂が好きなものなのか?」
これは素朴な疑問。
俺には興味のないことだが、話題のためだ。
【遼風】「人によると思いますよ…。でも私は好きですね」
【直哉】「へぇ~」
【遼風】「家のお風呂だけじゃなくて、週に2、3は温泉に行きますから…」
【直哉】「かなり行ってるな」
【遼風】「はい。あたしが行く温泉は夜になるとほとんど人が居ないので…」
【直哉】「それって…水明温泉か?」
【遼風】「そうです! よく分かりましたね」
【直哉】「いや…なんとなく…だけどな。夜にすいている温泉といったら、水明温泉しか俺は知らないし…」
【遼風】「あたしの家は、その温泉の近くですよ」
【直哉】「そうなのか? そうだとしたら、俺の家のすぐ近くかもな。俺の家から温泉まで15分ぐらいだし」
【遼風】「そうだったのですか…」
【直哉】「あぁ」
確かに…そうなる。
この広い町で同じ温泉に入ると言うことはやはり家が近いと言うことなのだろう。
わざわざ車で移動して温泉に入る気には俺にはなれない。
【遼風】「偶然ですね」
【直哉】「あぁ」
偶然…か…。
奇跡…に似たようなものだろうか。
数ある奇跡の中で印象的なものだけが『奇跡』と言われる、とどこかで聞いたことがある気がする。
まぁ、同じ学校の中に家が近い人がいてもおかしくはないと思うが…。
【遼風】「もしかしたら、昔すれ違っていたかもしれませんね」
【直哉】「そうだな」
癖で無愛想な返事になってしまう。
【遼風】「それではあたしの家はこちらですから」
【直哉】「あぁ」
【遼風】「それでは、また」
そういうと遼風は曲がっていった。
あれは…モカ珈房のある方角?
へぇ…。
【直哉】「さて、俺も帰るか」

……
………

===夜===

しかし…温泉の話題をしていたら、入りたくなってきた。

選択肢
『入る』---------彩音ルートへ侵入開始(これいこう選択肢を間違えるとバットへ…)
『入らない』-----いつもの日常END(バット)

≪入る≫

時間もちょうどいいぐらいだし…、入りに行くか。
俺は洗面道具を持つと、家を出た。

……
………
【七夏】「どうも」
相変わらずの声に見送られ、水明温泉をでた。
やっぱり湯冷めしにくいな。
いつも思うこと。

……
………
【遼風】「あっ、こんばんは。居元先輩」
【直哉】「こんばんは」
前から歩いてきた女の子は今日温泉の話題をしたばかりの遼風だった。
【直哉】「こんな時間にこんな所で何やってるんだ?」
【遼風】「それは、あたしも言いたいですけど…。居元先輩も温泉ですか?」
遼風が俺の手に持っている温泉セットを見ながら言う。
【直哉】「『も』、ということは、遼風さんも温泉…というところか…」
【遼風】「正確には入浴した後、緑地で星を見て来た帰り…でしょうか」
【直哉】「星?」
【遼風】「この季節は、空気が澄んでいて綺麗ですよ。ほら、5等星も綺麗に見えます」
そういいながら遼風さんは上を見上げる。
俺もつられて上を見上げる。
普段あまり見ない星もこうやって見てみると綺麗なものだった。
【直哉】「確かにな…。この街でも、ここまで郊外に来ると夜もくらいし…」
【遼風】「居元先輩は丘の上で星を見たことがありますか?」
【直哉】「いや…ないな…」
【遼風】「それなら、今度見に行ってみてください。綺麗ですよ」
【直哉】「あぁ」
流れで返事をしてしまった。
まぁ、これ以降この話しをしなければ問題はないはずだ。
【直哉】「そういえば―――」
【遼風】「なんですか?」
【直哉】「こんな夜遅くに一人で危なくないか?」
俺は話題を切り替えるためにふと思ったことを口にしてみた。
【遼風】「そうですね…。よく両親に怒られてしまいます」
【直哉】「ん? よく…?」
【遼風】「温泉の帰りは毎日星を見ます。はじめは視力回復のためだったのですけど…。星座に関する本を読んでから星が好きになってしまって…」
【直哉】「なるほどな…。それにしても、寒くないのか?」
【遼風】「水明温泉は湯冷めしませんから」
【直哉】「まぁな…。なんか溶かしているとか?」
【遼風】「それなら、結構怖いですね♪」
【直哉】「まったくだ」
【遼風】「それでは、あたしはそろそろ帰ります」
【直哉】「あぁ。またな」
【遼風】「はい♪ 今日ははじめて居元先輩から『またな』と言われました」
【直哉】「そうか? まぁ、それじゃあね」
【遼風】「はい」
そう言い残すと、遼風は立ち去った。
【直哉】「『今日はじめて居元先輩から『またな』と言われました』」
何かが変わりつつあるのだろうか…。
いやそんなことはない。
変わってたまるものか。
あれだけの悲劇を繰り返しておきながら、俺はまだ人を好きになるのか?
………好きになる…なんてどうして浮かんだんだ?
だんだん頭が混乱してきた。
帰ろう。

制作: 2002年
初出: 2003年11月23日
更新: 2005年4月27日
企画: 詩唄い
著作: 鈴響 雪冬
制作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2002-2005 Suzuhibiki Yuki

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