ReSin-ens

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第一章

10月4日 月曜日

外から小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
カーテンの隙間から光が漏れだしてくるのがわかる。
ついでに言うと、肌を刺すように冷え切っているこの部屋の気温。
【直哉】「うぅ… 寒っ… つーか、もう朝か…」
朝。学生は恨めしそうに天を仰ぐこの時間。
人が活動し始める時間帯。
俺は、ベッドから出ようとするが、寒いため出るにでれない。
朝は、低血圧の俺にとってきつく、寝起きは悪い方である。
時計は7時を回った所を指している。
飯食って準備しなくてはならない。
【直哉】「今の時間帯に服を着ると言うことは、時間との勝負だからな…」
一気に布団を跳ね上げ、窓際に掛かっている学生服を手に取る。
そして、袖を通す。
【直哉】「学生服着る時って冷たいんだよな」
何気なく言って、カーテンを開ける。
部屋を一気に明るくし、闇が光に塗りつぶされる。
【直哉】「さてっ。飯でも食うかな」
俺は、自分の部屋から出てキッチンに向かった。

まず、キッチンに入るとストーブを点ける。
そして、前日に轢いて置いたコーヒー豆を探し出すと、コーヒーメーカーに入れた。
今度は、冷蔵庫の中になにか朝食になる物を探す。
【直哉】「くそ。バターと卵、野菜が少々しかない… 。そろそろ買いに行くか… 」
後ろの方でボッとストーブに火が点火した音がした。
今日の朝は、パとスクランブルエッグになった。
のんびりと過ごす月曜日の朝。
まだ7時40分前後だ。
学校は、8時45分からなので余裕である。
部屋も暖まり、朝食を済ませた後なので後は、お楽しみのコーヒーを待つばかりである。
そののんびりした空間に、外から聞き慣れた声が割り込んできた。
【茜】「直ちゃ~ん。おはよ~」
茜だった。
【直哉】「入ってこいよ」
そう言うと、ドアが開けて入ってくる人の気配。
廊下を歩いてくる音がした後、この居間のドアが開く音がして見知った顔が笑顔で入ってきた。
【茜】「おはよう。直ちゃん」
【直哉】「おう、おはよ~」
【茜】「今日は少し寒いね」
よく見ると、茜の鼻の先が赤くなっている。
予想以上に外は寒いと見た。
その時、ピーとコーヒーメーカーがなった。
俺は、コーヒーを取りに行った。
【茜】「あっ!直ちゃん。私にもコーヒー」
【直哉】「良いけども、結構苦いぞ。今回もコーヒーは」
【茜】「う゛…」
茜の奴、かなり嫌そうな顔しているな…
そりゃあ、そうか。あいつ苦い物駄目だったもんな…
【茜】「いいもん。わたしも飲むから頂戴」
【直哉】「はいはい」
各自のカップにコーヒーを入れて、茜の居る居間に戻る。
【直哉】「ほらっ。こぼすなよ」
【茜】「わぁ~ありがとう」
湯気立つコーヒーからはとてもいい匂いがしていた。
【茜】「いただきまーす」
茜がカップに口を付けて、一口だけ、口に含んだ。
【茜】「・・・・・・」
【直哉】「・・・・・・」
何故か、無言になる二人。
そして沈黙を破ったのは茜だった。
【茜】「苦いよぉ~」
舌を出して、かなり辛そうにする茜。
俺にとっては、丁度良い苦みなのだが…
【茜】「砂糖か、ミルク、ある?」
【直哉】「無い」
【茜】「ううぅ~」
【直哉】「だから言ったのに… 懲りない奴」
【茜】「でも、飲む…」
又口に含んで、同じ行為を繰り返す茜。
茜の悲痛な声はまだ続いたのだった。
外は日差しが弱く、明るかった。

学校に行くという行為は、慣れると楽なモノである。
まだ、息は白くはならないが、十分寒い。
これからも寒くなっていく。
そうすると布団から出られなくなっていく。
【茜】「直ちゃん。いこっか」
【直哉】「おう」
そして茜と二人で学校に並んで登校した。
これももう慣れたことである。

俺達が住むこの河流市は、人工70万代の大型の都市だ。
活発であり、それなりに住み易く過ごしやすい。
そして俺が通っている学校は鈴木野原大学付属高等学校という。
略称で『鈴高』と言われている。
この学校は、各学年に5クラス存在する。
その中で俺は、二年生のC組なので、二階のど真ん中になる。
もっとも、本当の真ん中は食堂なのだが…
茜も同じクラスでいつも行動は共にしている。
【義明】「よう。一緒に飯食うか?」
【直哉】「飯か… 義明はどうするんだ?」
こいつは、春日 義明(かすが よしあき)。
義明もよく一緒に行動をする奴だ。
こいつは、放課後とある所で行われるギャンブル同好会(非公認)に参加している奴だ。
【茜】「あれ?春日君いつも、お弁当じゃない?」
茜が会話に割り込んできた。
【義明】「いや… 今日は弁当を忘れちまってな。だから一緒に食堂行かないか?」
【直哉】「ああ、良いぞ。どっちみち俺も食堂に行くし」
【茜】「あっ。私も行く~」
【義明】「おう。じゃ行くか」
俺、茜、義明。
この三人は、2年C組ではいつも一緒にいることが多い。
まっ。俺から見れば、波長が合うというか気が合うというのか…

【義明】「相変わらず混んでんな~」
忌々しげに義明が呟くが現状が変わるわけではない。
【茜】「じゃあ、何食べよっか?」
【直哉】「俺は、こんがりベーコントーストとコーヒー」
【義明】「俺は、豚キムチラーメン」
【茜】「はぁ~… わかりやすいというかなんというのか…」
茜が肩を落とすのが見える。
【茜】「じゃあ、私はカレーでも食べようかしら」
そういいそれぞれの列に並ぶ俺達。
時間は、丁度学生達の胃袋達が一斉に鳴り出す頃。
そろそろ本格的に混み始めるだろう。
【直哉】「急がないとな」
急いで戻ってみたら、他の二人はもう戻ってきていた。
【直哉】「早っ!」
俺は驚きながら席に座った。各自戦利品を机に並べ、会話の合間に口に運んでいく。
【義明】「でもさ… 直哉ってどうしてそんなにコーヒーが好きなんだ?」
【茜】「私もそれ疑問。どうしてあんなに苦い物飲めるのかわからないわ…」
【直哉】「あのな、好きな物に疑問を持てという方が難しいだろうが」
【義明】「まあな」
【茜】「でもそれって、自分に対する自覚が足りないと言うこともあるわよ」
唐突だが、茜は哲学書を読むことが好きなのである。
だから、よく日常会話に盛り込ませてくる。その所為で、口論では勝てない。
よく先生といじめの事について等を話し合っているのが見かける。
【茜】「自分自身が見えているのは全体の四分の一で全体を見るためには…」
【義明】「長くなりそうだな…」
「ああ」俺は、義明の言葉に肯定し飯を食うことに専念した。
【茜】「だから、他人の意見も…」
そんな事には気付かないで茜は只話し続けていた。
終わったのは、昼休み終了5分前だった。

放課後になると学生は思い思いの場所に向かって行く。
俺は、朝のことを思い出し、食材を買いに行くことにした。
【茜】「直ちゃんは今日は何処に行くの?」
【直哉】「ああ。俺は食材を買いに商店街に行くけど」
【茜】「じゃあ、私も行く。そろそろ、シャンプー買いに行くから」
【直哉】「じゃあ、行くか」
【茜】「うん」
茜は、毎日風呂に入っている(本人談)。風呂に入らないと眠れないらしい。
【茜】「本当に!そんな裏技が…」
茜と他愛のない会話。いつもこんな感じで居る。
義明は、学校が終わると直ぐに保健室に行ってギャンブルをやっている。
非公式なのに良くやるよ… 。つーか学校内でやっててばれないのか不思議だ… 。
【直哉】「さあて、俺はまずは、スーパーに入るけど茜は?」
【茜】「あっ、私は専門店に行くから」
【直哉】「そうか」
【茜】「でも、直ぐに買ってくるから私もスーパーに行くね」
【直哉】「おう。わかった。じゃ、またな」
【茜】「うん。じゃあ。また直ぐに…」
茜はそう言い、人混みの中に消えていった。
【直哉】「さてと…」
俺は、直ぐ近くにあるスーパーに入っていった。
いつも思うのは、この商店街って結構儲かっていると言うことだ。
入ると、いつも道理元気な挨拶が降ってくる。
【店員】「いらっしゃいませー!」
俺は、かごを片手に食材-主に、野菜と肉、パン系-を探しに行く。
【直哉】「今日は、野菜はいつもの半額か… でも、芯食感も良いな~」
野菜をかごに放り込みながら、俺はパンをどうしようか悩んでいた。
【直哉】「俺は、いつも洋食ですますからな~。迷う…」
結局、芯食感宣言のパンをかごに放り込み、ハムを放り込んだ。
【茜】「直ちゃん。余り偏った物食べない方が良いよ」
【直哉】「うわっ!茜か… 。全く気配がなかった」
【茜】「うふふ。今日は機嫌がいいんだよ。私」
【直哉】「いつも、脳天気なのに…」
【茜】「なんか言った?直ちゃん」
【直哉】「いえ… 言っていません」
こう言うときの茜は怒らせない方が身のためだろう…
俺は、かごをレジに持っていこうとするが茜が阻止する。
【茜】「駄目だよ。もう少し魚介類を混ぜなきゃ」
【直哉】「だってよ、どうパンと会わせるんだ?」
【茜】「ご飯と合わせればいいじゃない」
【直哉】「俺は、洋食派なんだけども」
【茜】「だったらパンの上に乗せるとか?」
…… …
うっぷ… 想像してしまった。相当気持ち悪い。
【直哉】「ま、いいや。とりあえず会計をすますか」
俺の行動は結局茜の無視だった。

外に出ると、スーパー内の活気程ではないしても、活気は有るが少し寂しく感じる。
【直哉】「寒いなぁ…」
空を見ると、雲が少なく輝き始めている星が見える。
夜が近いことを知らせている。早く帰らなきゃ。
【茜】「直ちゃん。酷いよ、無視するなんて」
【直哉】「茜が言いたいことはもっともだが仕方ないことだ」
【茜】「うぅ~。いつもそればっかだと体壊すよ」
【直哉】「まあまあ。良いだろ」
【茜】「じゃあ、寒いから、何か飲み物奢ってよ」
【直哉】「はぁ?!どうしてそうなる」
【茜】「良いでしょ?」
【直哉】「わかったよ。ほら120円。早く買ってこい」
【茜】「わぁ~い」
とことこと近くに自販に飲み物を買いに行く。
コインを入れて、ホットの棚に有るボタンを押す。
【茜】「♪、♪… あ~!直ちゃ~ん」
少し涙目でこちらに小走りしてくる茜。
その手には、コーヒー。マイルドで甘い奴だが、俺的には余りおいしくない。
【茜】「これ~!」
そう言い差し出したコーヒーは冷たかった。さっきは確かにホットの棚を押したはず。
しかしこれを見る限り、入れる方が間違いだな。
【直哉】「仕方ない。貸してみな」
そう言い、茜の手からコーヒーを受け取ると少し、「力」をこめた。
暖かくなっていく飲み物。今まで何回もしてきた事なので慣れた。
茜はこの力は何回も見ていた。
少しして茜に返してやった。
【茜】「直ちゃん、ありがとう」
そう言い、茜はブルトップを上げて暖かくなったコーヒーを一口飲んだ。
【茜】「直ちゃんも飲む?」
【直哉】「いや、いい。そのコーヒー余り好きじゃないから」
【茜】「ふ~ん。そうなの。じゃあ私飲むね」
茜はコーヒーを飲み始めた。

夜。放射冷却現象の効果が最高潮に達する時間。
外はかなり冷えてきているが家の中は暖かいものだ。
【直哉】「さて。そろそろ、寝る時間だな」
俺は時計を見ると、12時直前という頃。
【直哉】「豆でも轢いて寝るとしよう」
今日少しだけ買ってきたコロンビア豆。何となく買ってみたがどういう味が出るかは明日のお楽しみだ。
【直哉】「え~と、五分の一だけ轢いてみるか」
ゆっくりと作業する俺。
これも明日の朝のお楽しみのため。そのために労力を割いている。
轢き終わると、辺りにはコーヒー豆独特の匂いが立ちこめる。
俺はこの匂いを肺いっぱいに吸い込んで今日は寝ることにした。
【直哉】「俺の部屋… 寒いだろうな…」
そんな妄想が頭をよぎるがまさにその通りだった。
しかし睡魔には勝てずに目を閉じて直ぐに意識が闇に塗り替えられていくのがわかった…

10月5日 火曜日

見事に寒くなった朝の日。
毎日毎日こうも寒くなって楽しいかと言わんばかりの寒さ。
温度計は氷点下を指すかどうかの間際。
【直哉】「まったく。寒い日が続く…」
今日も愚痴って居ても始まらないので、ぱっぱと飯を食ってコーヒータイムにした。
【直哉】「今日はコロンビア豆を使っているからな… なんというか… 」
いつもとは違う豆を使うと慣れない物である。
【直哉】「まあ… 珍しいし、それなりにおいしいから、まっ、いっか」
そう言い、今日は少し早めにコーヒータイムを終了した。
【直哉】「さてと…」
【茜】「直ちゃ~ん」
【直哉】「んっ?茜の声がしたな」
【茜】「直ちゃ~ん、おはよ~」
【直哉】「茜か。今行く」
そう言い、速攻でストーブを消してコーヒー豆をしまう。
今から出て玄関に行くと、茜がそこにいた。
【直哉】「よう。おはよう」
【茜】「うん。おはよう」
【直哉】「学校に早めに行くかなと思ってな」
【茜】「へぇ~珍しいことも有るんだね」
【直哉】「まあな」
俺は靴を履きながら、茜と受け答えをしながら玄関から外に出た。
外に出ると一気に寒さが増し、肌に突き刺さるかのように感じる。
空を見ると、雲が鱗状になっている。
【直哉】「こりゃあ… 明日は曇りだな」
【茜】「えっ?」
茜もつられて俺の視線の先を見る。
二人の視線の先には、空の中に浮かんでいる鱗状の雲。
【直哉】「じゃ、行くか」
【茜】「行こっ!」
俺は茜と恒例の如く、学校に並んで登校した。
いつもより15分ばっかし早く付いたので、学校でゆっくりと過ごせた。

国語の授業中。
不意に、茜の方を見てみた。
すると茜は真面目に黒板に書かれた文字をノートに写している。
真面目にやっているなぁ…
確かに小さい頃から少し固い所もあるけどそれはそれであいつなりに考えてのこと。
むやみに考えないで行動したりはしない。
だから結構頭の回転は良い方である。
まっ… 結構どじなところも有るんだけどもな…
不意に思ったこんなくだらない一時。

【直哉】「曇り空は嫌だな」
【茜】「あはは。直ちゃんらしい意見だね」
【直哉】「あぁ~」
【茜】「そうだ!直ちゃん。今日一緒に帰らない?」
【直哉】「帰りか… ああ、いいぞ」
【茜】「じゃあ、約束ね」
【直哉】「ああ」

昼休みは、食堂で軽く済ませた。
茜や義明はいまだに食堂で食べている。
俺は昼食後屋上に行った。
理由は、二つある。
一つ目は、食堂は早く開けないと次の人が待っているから。
もう一つは、ここが好きなのだ。
何故かと言われれば困るが一つ言うなら、広く自然の風景を見ることが出来るからだろう。
【直哉】「朝に比べ結構暖かくなったとは思うけどまだ少し寒いな」
息は白くまでは行かないが、鳥肌が立つ位。
空は雲が適度にかかり、太陽が地面を照らしている。
【直哉】「でも、太陽が当たるとそれなりにぽかぽかしてくるな」
空を眺めながらのんびりと過ごす。
【直哉】「雪はまだ降らないと思うけど、雨は勘弁して欲しいな」
雪より雨の方が数倍、たちが悪い。
雪は、交通などの便には困るけど何とかなる。
けど、雨は濡れるし傘をささなければいけないのでいわば、面倒くさいのだ。
その時、学校のチャイムが鳴った。
【直哉】「おっと、戻らないとな」
こうして昼休みが終わり、午後の授業が始まった。

【先生】「だとして、この方程式を掛けて、計算する。すると…」
数学の教員が勉強を教えている。
学生にとってはつまらない時間。
チャイムがなるまで後もう少し。生徒はみんな祈る気持ちで待っていた。
そして、その時が訪れる。
【先生】「で、・・・・・・よしっ。今日はここまで。挨拶」
【クラスメート】「起立、礼」
日直がすかさず挨拶を入れて、今日は全日程を消化しきった。
【義明】「直哉」
義明が俺を手招きして呼んでいる。
【義明】「すまんが俺の替わりに掃除してくれないか?」
【直哉】「えぇ~俺が?」
【義明】「ああ。頼むよ」

選択肢
「仕方がないな」
「今日はだめなんだ」

≪仕方がないな≫

【直哉】「仕方がないな」
【義明】「やってくれるか。ありがたい。じゃ、これな。後は頼むぞ」
【直哉】「全く」
【茜】「直ちゃん。一緒に帰ろう」
茜が鞄を持って話しかけてくる。
【義明】「悪いが、今日は義明に掃除頼まれてな。だから先に帰るか、待っていてくれ」
【茜】「う~ん、わかった。じゃあ、また明日ね」
【直哉】「わるいな」
【茜】「いいよ。じゃ」
そう言うと茜は、教室から出ていった。
【直哉】「さてとじゃあ、ぱっぱと終わらせて帰るとするかな」
俺は、少し意気込んで箒(ほうき)を掃き出した。

【直哉】「はぁ~。今日は義明の所為で帰りが遅くなってしまったな」
家の中はシンとしていて、空気は朝のままだった。
もっとも、空気が入れ替わっていれば怖い。
【直哉】「さてと、飯を食うかな。今日は…」
今日はパスタだった。
しかも素パスタと言うのかな?これ。

 

10月08日・金曜日・(出会い)

*before_ayane_01
;帰りのホームルームが終わった後、主人公は道具を鞄に詰め終えた。

【直哉】「ふぅ~。やっと今日も終わった」
明日は休みだし…今帰ってもなぁ。
何をしようか考える。

……
………
たまには、絵でも描きに行くか。
【直哉】「えっと…」
俺は木炭やスケッチブックなど最低限の道具をそろえていく。
既に何冊目のスケッチブックだろうか。
そんなことを考えながら、俺は部屋を出た。
自転車を用意する。
新聞配達業の人がよく使うようなサイドのカゴを取りつけ、その中にスケッチブックをいれる。
画材をしまった鞄を自転車のカゴに入れると、俺は家を出た。

……
………
学校を通りすぎる。
まだ通学路には生徒が歩いてる。
グラウンドではサッカー部が練習をしているようだ。
大学生だろうか。私服の生徒が話しながら歩いている。
そんな中、俺は丘の上の公園を目指していた。

……
………
いつもの人気の無い『河流市自然公園』。
自然公園のためだろうか、これといって遊具もない。
俺は自転車から降りると適度な場所を探した。

……
………
ここがいい。
丘の上にある木が見える場所。
腰を下ろすとスケッチブックを開いた。
真っ白なページが目にさらされる。
木炭を持ち、スケッチブックに走らせていった。

……
………
ん?

===背景CGにキャラクターをレイヤーで重ねる(又はイベントCG1)===

あらかたのラフを描いたところで、今までいなかった人に気がつく。
いや、目に入っていなかっただけかもしれない。
視界の中の木の下…女の子がいた。
制服から見ると…うちの学校の生徒だろうか。
こんな所で何をやっているんだか。
まぁ、俺には関係ない。
その場所を後回しにして、違うところの作業に取りかかった。

……
………
俺はもう一度木のあった場所を見た。
…さっきの女の子はもういない。
俺は空白だった場所に木炭で線を重ねていった。

……
………
大分出来あがってきた。
【直哉】「んっ………」
背伸びをしてそのまま後ろに倒れる。
【女の子】「きゃ」
ん?
誰かの声が聞こえた。
そのままの姿勢で声のした方を見た。

===イベントCG2===


見知らぬ人。
関係ない。
俺は視線を空に向けた。
【女の子】「あっ…あの~?」
どうやら、俺は話しかけられているらしい。
【直哉】「ん?」
【女の子】「あの…大丈夫ですか?」
何の事だ?
俺に話しかけているんだよな?
俺が困った顔をすると彼女は、
【女の子】「えっと…急に倒れたので…」
と答えた。
あぁ…その事か。
【直哉】「背伸びをしただけだ。安心してくれ」
【女の子】「そうですか。それならよかったです」
…何なんだ? こいつ…。
俺は話を早々と切り上げる異にした。
【直哉】「心配してもらって悪いけど…、今から集中しないといけない所だから、話しかけないでもらえるかい?」
出来るだけ丁寧な言葉で会話を立ちきる。
【女の子】「わかりました」
俺は起き上がると、スケッチブックを持ちなおした。

……
………
サササッ…。
木炭を走らせる。
細い線が次第に太く濃い線になり、段々と風景が紙の上に現れてくる。

……
………
一通り描き終えた。
【直哉】「ふぅ…」
【女の子】「もう…大丈夫ですか?」
後ろから声をかけられる。
まだいたのか?
【直哉】「お前も、暇な奴だな」
制服を見る限り、1年生だった。
【女の子】「そうですか? あたしにとっては有意義な時間でした」
そういって自分の持っている本を指差した。
【直哉】「本を読んでいたのか」
【女の子】「はい。ずっと後ろで」
何の本を読んでいるのか? と聞こうと思ったが、俺には関係のない事だ。
「絵を描くのが好きなのですか?」
【直哉】「まぁ…な」
彼女の質問。
【女の子】「何時も、ここで描いているのですか?」
【直哉】「いや、そうでもない」
【女の子】「…」
【直哉】「…」
俺の無愛想な返事に会話が自然に途絶えた。
【女の子】「もしかして…邪魔ですか?」

選択肢
「う~ん…。そうかもな」
「そうでもない」

《「そうでもない」》

【直哉】「そうでもない」
【女の子】「そうですか? それでは、まだここにいますね」
【直哉】「好きにしてくれ」
【女の子】「はい」
そう言うと、彼女は横に座った。
その隣で、俺は絵を書き始める。
放っておくと一人で帰るだろう。
これが俺の選んだ道だから。

……
………
下書き終了~。
【女の子】「ところで、何時も風景を描いているのですか?」
まだいた…。
【直哉】「そうだな」
【女の子】「やっぱり、自然の景色っていいですよね。あたし、自然が好きですから」
【直哉】「そうなんだ」
【女の子】「それにしても、大きいですね」
【直哉】「そうでもない」
確かに他の人が使うよりは一回り大きいだろう。
【女の子】「どうしてですか?」
しょうがない…。
この子の欲求を満たさないと俺は解放されないらしい。
【直哉】「小さい画帳に描くと伸びやかさの無い、小細工に加減したクロッキーになってしまうんだ」
【直哉】「つまり、大胆な強い線が生まれてこない」
【直哉】「それに、画面全体が視野にスッポリはまるから、モデルを捉える構成が甘くなってしまう」
【直哉】「臆病でない強い線を得るには、大きな画帳を暴れまわるような手の動きも必要なんだ」
【女の子】「そう…なんですか。初めて知りました」
どうやら満足してくれたらしい。
【女の子】「それじゃあ、あたしはそろそろ帰りますね」
【直哉】「あぁ」
【女の子】「それでは、また」
また?
俺が知っている限り、少なくともそれは、『再会』を意味する『わかれ』の言葉だった。

一体、何だったんだろう…。
結構、大人しそうな子だったけど…。
って…俺は何を考えている!
あの『力』…。
あの力を知っていらい、俺は人とは付き合ってはいけないんだ。

===公園の画像、ネガ反転で表示。1秒で自動フェードアウト===

あの時の光景がまた脳裏をよぎる。

……
………
「今日は…帰ろう」
俺は道具をしまうと、公園を後にした。

10月12日 火曜日

今日は、テスト一日目。
朝早くから学校に来て勉強している優等生か赤点学生とは違うので俺は悠々と登校してきた。
隣には茜が居て、すがすがしいのかどうか微妙な朝の空の下を歩いてきた。
【茜】「今日はテスト一日目だよ。確か科目は・・・」
【直哉】「英語に、国語。世界史の三つだ。今更確認か?」
【茜】「えへへ。ちょっとね。今回のテスト勉強は頑張ったからいい点を期待気味なの。」
【直哉】「ふーん。」
【茜】「あっ。何?!その、どうでも良いです… って言う、返事は。」
【直哉】「いや… 俺ってあんまりそう言うのに関係しないし。」
【茜】「はぁ… 直ちゃんは、良いよね。」
茜が少し落ち込んでいるのを横目に学校に登校した朝のこと。

カリカリカリカリ カランカラン カリカリカリカリ
シャーペンやら、鉛筆やらがテスト用紙と机を叩いている音。
それに混じって微妙に聞こえてくる、鉛筆を転がす音。
たぶん、サイコロ鉛筆を転がしているのかテストギブアップの意味だろう。
今は、国語。
選択肢が多いから、使う奴も増えているのだろうか。
あちらこちらで転がす音が聞こえる。
そう言えば、今日の朝。必至に鉛筆に数字を書いていたな。義明…
まさかな… ははは。
テストに集中しよう。

チャイムと同時に悲鳴と歓声が教室を支配する。
その中で、俺はまあ自信が有る程度の点数は取ったと思う。
【義明】「直哉。どうだった?世界史、問題数多くね?」
【直哉】「確かに多かったな。お前何処間違えたんだ?」
【茜】「どうだった?直ちゃん。今回範囲狭いからと思ったら結構問題多かったね。」
【義明】「う~んと、ウィーン会議からドイツ統一までの範囲だよな。」
【直哉】「で、お前等何処間違えたんだ?」
【茜】「私は、イタリア統一戦争の所付近。」
【義明】「俺は、ドイツのところが全滅だ。」
【直哉】「・・・・・・。」
【義明】「オイ。直哉今何げに笑ったろ。」
【直哉】「全然。その前に早く帰らないと明日も有るぞ。」
【義明】「くそ。覚えていろよ。俺は忘れるが。」
その時担任が教室に入ってきた。一斉に静かになる教室。
【担任】「テストは後二日有るからな。頑張るように。挨拶。」
【クラスメート】「きりーつ、れい。」
【義明】「直哉、また明日な。」
【直哉】「じゃあ、また明日な。」
義明の奴が、号令がかかった後すぐさま教室を脱兎の如く走り出ていった。
【茜】「直ちゃん。帰ろ。」
【直哉】「… おう。帰るとするか。」
茜と二人でいつものように家への帰途についた。
この後俺は家に帰って飯を食い、いつもの如くコーヒー豆を轢いて寝る事にした。

10月13日 水曜日

テスト二日目。
今日は数学ⅡとOCがある。
学校では、もう勉強している奴が居る頃、俺は茜と一緒にコーヒーを飲んでいた。
まぁ、それに対して義明はどうなっているのかはわからなら無いが…
たぶん…また何かしら作っていたり書いていたり…
まさかな…
【茜】「どうしたの?直ちゃん?」
【直哉】「いや、何でもないよ。とりあえずそろそろ学校に行くか。」
【茜】「そうしよっか。」
【直哉】「じゃあ、準備してくるな。」
【茜】「私は外で待っているよ」
【直哉】「直ぐ行く!」
俺は、一気に準備して外に向かった。
【直哉】「いくぞ~」
【茜】「お~」

学校に行くと、いつもより早めに出てきたはずなのにいつもよりも人がいた。
【直哉】「早ぁ~」
【茜】「確かにね。」
【義明】「直哉~余裕だな?」
【直哉】「おう。とりあえずはな…」
【茜】「そう言う春日君はどうなの?」
う゛…みたいな反応をして後ずさる。
【義明】「よ、余裕さ…」
【直哉】「そうかそうか…じゃあ、テスト後勝負だな」
【義明】「…くっそぉぉぉぉ!!」
義明はそのまま、教室を出ていった。
結構いじれる奴…と思った。

テスト2時間が終わると学校はもう終わり。
おかげでどうしようか悩むくらい時間はある。
【茜】「直ちゃん、どうする?どっかよる?」
【直哉】「いや…今日はもう家に帰ろっかな」
【茜】「そう、じゃあ私はこれから商店街に行くから途中まで一緒。」
【直哉】「ああ。良いぞ」
それから俺は茜と一緒に帰って茜は商店街に向かったのだった。

夜はいつも通り、夕食に悩み結局いつも通りのパスタになり、コーヒー豆を轢いて寝たのだった。

制作: 2002年
初出: 2003年11月23日
更新: 2005年4月27日
企画: 詩唄い
著作: 鈴響 雪冬
制作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2002-2005 Suzuhibiki Yuki

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