アクロス・ザ・タイム -エピローグ-

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エピローグ

「起立」
「礼」
「着席」
 全くいつものように朝のホームルームが行なわれる。
 はっきり言って興味無し。
 …
 ……
 ………
 《ガヤガヤ》
 回りが騒々しい事に気がつく。
 口々に皆が何かを言っている。
 転校生らしい。
 そんな事は俺には関係無い。
 ドアの開く音がして転校生が入ってきたらしい。
 俺はうつ伏せになった。
 眠い。
 体が疲れている事を感じ取った。

 …
 ……
 ………
「えっと………もしもし?」
 誰かに声を掛けられる。
「何?」
 目を開けてもさっきまで眠っていたせいか、視界がぼやける。
「転校してきた、時ノ沢夏菜です」
「転校してきた、向井渉だ」
「「以後、よろしくお願いします」」
「あぁ、よろしく…」
 …?
 ……?
 ………!!
「なんだって!?」
 俺は目をこすった。
 一気に視界がはれていく。
「おはよう」
「よっ」
「夏菜さん…渉?」
「そうだよ」
「そうだ」
「どうしてだ…」
 何故この二人が居る…。
 俺は元の世界に戻る事に失敗した?
「どうして…って言われても…。表面張力って知ってる?」
「あぁ、水分子の結びつきの説明には持って来いの話だな」
「それで表面張力で水が盛上ってるときにコインを一枚づつ入れてくの。それでね、コインを入れてついに水が溢れた時溢れた水の量は、最後に入れたコインの体積より多くなるんだよ」
「だから?」
「まだわからないのかな?」
「全くもって…」
「コインが水だとしても結果は同じ。最後の…一滴が前橋君。溢れた水が、前橋君と、私と、向井君」
「それって…」
「そういう事だ。遼一」
「お姉ちゃんに聞かなかった?」
「何を?」
「影響が大きすぎた場合…時間の流れを補正する事が出来ないかもしれない…、って」
「それは聞いたけど…」
「一つの物体によって狂った時間の流れを補正するためには、X、Y、Z、T、Tv、Qの事象を補正しないといけない。だから、前橋君に続いて、私と、向井君、お姉ちゃんもきてるの」
「それは…本当か?」
「そう。ずれたものを直すためにはそれ以上の力を加えないと、なおらないからね」
「そう言う事だ」
「静姉さん?」
「お姉ちゃん!?」
《ザワザワ》
休み時間で賑わっていた生徒が更に騒がしくなる。
当たり前だ。
今日から就任する先生がいきなり教室に現れたら、誰でも驚くだろう。
「と言う事で、これからよろしくな。前橋」
「改めてよろしく、前橋君」
「お互いよろしく頼むぜ。遼一」
「あぁ………こっちこそ………よろしく」

時間の流れ…。
それは変える事が出来ない。
しかし、それ以外は人によっては変える事が出来る。
それが運命を切り開くと言う意味。

「この補正によって、いくらかは時間の流れは元に戻った。次に二つの世界がぶつかるのは、約ニ年後」
「そうなんですか?」
「そして、それを最後に、二つの世界は元に戻る」
「と言うと…」
「元の一つになると言う事だ」
「!?」
「そして、全ての時の流れは一つに集約され、すべての事象は平均化される。もし、あっちの世界で衛さんやまさみちゃんが生きていたら…また会えるかもしれないな。それに、ニ0秒って結構長いもんだよ。前橋が行ったのを見送ってから三人で飛び込んだからな」
「そうだったんですか…。一緒に飛び込めばよかったじゃ無いですか。
「お前なぁ…ドラマティックに登場したいんだよ」

「遼一、だから言っただろう」
「そうだな」
「俺は約束を守るって」
「全くその通りだ」
「これからも、よろしく頼む」

「前橋君」
「夏菜さん」
「まだ、私達は…恋人だよね?」
「うん。あの日の告白はまだ無効になったわけじゃ無いからな」
「それを聞いて安心したよ」
「俺も…嬉しい」
「遼一君、改めて、よろしくお願いします」
「夏菜…俺こそ、よろしくお願いするよ」

時間が交わるドタバタ恋愛アドベンチャー小説
アクロス・ザ・タイム
 ~決して忘れる事の無い想い~
 ~Across the time~

ここに、その物語の終わりと、新たなる創造を示す。

初出: 2003年3月13日
更新: 2005年2月5日
原作: 鈴響 雪冬
著作: 鈴響 雪冬
制作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2003-2005 Suzuhibiki Yuki

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