アクロス・ザ・タイム -第八章-

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第八章

9月10日(水曜日)

「んぅ~っ」
 俺は目を覚ました。
 自分の部屋のベッドの上。
 ゆっくりと置きあがると、俺はリビングに向かった。

 いつもと同じ光景。
 テレビをつけ、俺はチャンネルを合わせる。
 ニュースキャスターが、今日の日付である九月一0日を告げた。
「戻って…きたんだな…」
 朝食を用意する。
 いつものように平らげ、そして家を出た。
 自転車に載り、時計を確認しようとして無い事に気がつく。
 そうか…。
 あの時計は置いてきたんだ。

 俺は自転車をこぎだした。
 あの踏切を越えれば大丈夫だ。
 踏切を越えた後予想通りのタイミングで踏切が降りる。
 「…そうか…俺は帰ってきたんだよな」
 今更になって、実感がわく。

 失うものは大きかった。
 そして…手に入れたものも大きかった。
 俺の中の記憶がある限り、あっちの世界の人は俺の中でも生き続け、そして成長する。
 そうか…失うものは無いんだ。
 俺の中で全てがある。
 いまの俺には…生きていく強さがある。
 この強さを持って生きていこう。

 俺は一段と自転車を強くこぎだした。
 新しい生活を始めるために。
 新しい、自分を探し出すために。

 俺の不思議な「自分の知っている時間」を越えた物語が今、終焉した。
 夏の風が…夏の太陽が…夏の空気が…夏の光が…俺の背中を少しだけ、ちょっとだけ、押してくれた…。

初出: 2003年3月1日
更新: 2005年2月5日
原作: 鈴響 雪冬
著作: 鈴響 雪冬
制作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2003-2005 Suzuhibiki Yuki

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