Top > ウェブ公開作品 > 小説 > 長編小説 > アクロス・ザ・タイム > 第八章
「んぅ~っ」
俺は目を覚ました。
自分の部屋のベッドの上。
ゆっくりと置きあがると、俺はリビングに向かった。
いつもと同じ光景。
テレビをつけ、俺はチャンネルを合わせる。
ニュースキャスターが、今日の日付である九月一0日を告げた。
「戻って…きたんだな…」
朝食を用意する。
いつものように平らげ、そして家を出た。
自転車に載り、時計を確認しようとして無い事に気がつく。
そうか…。
あの時計は置いてきたんだ。
俺は自転車をこぎだした。
あの踏切を越えれば大丈夫だ。
踏切を越えた後予想通りのタイミングで踏切が降りる。
「…そうか…俺は帰ってきたんだよな」
今更になって、実感がわく。
失うものは大きかった。
そして…手に入れたものも大きかった。
俺の中の記憶がある限り、あっちの世界の人は俺の中でも生き続け、そして成長する。
そうか…失うものは無いんだ。
俺の中で全てがある。
いまの俺には…生きていく強さがある。
この強さを持って生きていこう。
俺は一段と自転車を強くこぎだした。
新しい生活を始めるために。
新しい、自分を探し出すために。
俺の不思議な「自分の知っている時間」を越えた物語が今、終焉した。
夏の風が…夏の太陽が…夏の空気が…夏の光が…俺の背中を少しだけ、ちょっとだけ、押してくれた…。