作品紹介 -雪解け水に手をさらして 第二巻-

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最新の短編作品を六話詰め込んで、お送りする短編集第二巻。
二重影と鈴響雪冬による短編作品を収めます。

雪解け水に手をさらして 第二巻

各作品の紹介

二人 (二重影) 2000文字シリーズ

 私はジャングルジムに登った。だって、此処から見る風景が好きだから。一番上まで登り、辺りを見回す。…静かだ。
 本当に静かだった。いつもなら皆がいて、騒いでて五月蝿かったのに。
 私は空を見上げた。満月だった。
 暫く満月を見てるとなんだか寂しくなってきた。
「…お母さん……」
 そう呟くと…。
「何してんの?」
 突然下の方から声が聞こえてきた。
「…空を見てたの」
「そうなんだ。…ねぇ、そっちに行ってもいい?」
 私は頷いた。

二人 (鈴響雪冬) 2000文字シリーズ

「ねぇ、薫? どうしてこの場所が好きなの?」
「えっ? 私がこの場所を好きな理由と同じ………そう…」
「聞かせて欲しい…? そう………ね…。笑わないで下さいね」
「私がこの場所を好きな理由………」
「ここは…風が見えるから………ここなら風を見ることが出来るから………たとえ目が見えなくても…目を閉じていても………風を見ることが出来るから」
「ん? もっとあるでしょ?って? そうね………」
「全てを見ることが出来るから………暗闇の向こう側に…全てを見ることが出来るから。いつもは見えない物が…ここなら見えるから………」

いつだって俺は元気さ (鈴響雪冬)

「お前が生きていた証はここにいるからな」
 いつのまにか眠ってしまったかえでを『おぶひも』から降ろし、腕に抱く。
「ほら…ね」
 大切に育ててやるさ。
 お前と、俺の子供だからな。
 きっと美人になるよ、お前の子供だから。
 どっちに似るんだろうな、楽しみだよな?
 っと…やべ…泣きそうになってるじゃねぇか。
「心配すんじゃねぇ、俺は元気さ」

Thaw (二重影)

 そう――此処が俺の凶暴な幼なじみの知夏が住んで居る銭湯。
 いや、今は住んでいたかな。
 俺がこの町を出て行ってから、何年かして知夏は死んだそう だ。
 それを知ったとき、俺は何も感じなかった。
 いや、何か感じたのかも知れない。
 俺は涙を流していた。
 姉さんが言うまでそれが判らなかったのだ。
 俺たちは知夏の位牌を見せてもらった。
 しかし、これが知夏の位牌です。と言われてもピンと来なかった。
 俺には木に文字が書いてある。
 そう、思ってしまった。
 だって、小指の痛みがあるから――。

フラれたけど私は元気です (鈴響雪冬)

 今でも忘れてはいないんだよね、好きっていう感情はないんだけど。
 だからね、こうしてここに来てるんだから。
 ばっさり髪も切ってスッキリして…。
 私は今は元気。
 一人になってから一人で出かけることが多くなった。
 何時も後ろだった自転車だって、今は自分でこぐ。
 そのときに何時も思い出すんだ。
 一人なんだ…。
 昔は君とだったって。

運命の出会いと初恋 (鈴響雪冬)

 わかっている。この生活が『いつもと同じ』で『変化が無く』て『平凡』で、『つまらない』ものだってぐらい…。
 何も変わらないのが一番幸せという人がいる。でも私はそう思わない。変化があるのが自然の動きだし、だからこそ、楽しいのではないか? と、頭の中でわかっていても、いざ動こうと思うと、だるくてしょうがない。どうしてだろうか。
 水滴が水面ではねる音で私は意識を現実に戻し、体を拭き、バスタオルで包み込むと、浴室から出た。
 いつものような体の交わりをふくめ、私の今の生活は変化が乏しい。近所の人だって同じようなものだと言うことも知っている。何度もこのことを友達に愚痴った事だってある。
 だから、私は突然言い出したのかもしれない。
 『旅行に行こう』って…。

ストーリー

【サムネイル】 表紙のサムネイル。 最新の短編作品を六話詰め込んで、お送りする短編集第二巻。相変わらず作品のテーマはありません。二重影と鈴響雪冬による短編作品を収めます。2千文字シリーズといった、わずか二千文字で作品を表現するシリーズなどを初めとし、比較的短い作品が集まっています。

 収録作品は、『二人』、『二人』、『いつだって俺は元気さ』、『Thaw』、『フられたけど私は元気です』、『運命の出会いと初恋』の6作品です。

(1万8000文字相当)

詳細

作者
  • 原作: 二重影、鈴響雪冬
  • 著作: 二重影、鈴響雪冬
  • 脚色: 鈴響雪冬
冊子
  • 規格: B5サイズ、34ページ
  • 価格: 200円
  • 印刷: コピー(表紙のみインクジェット)
  • 表紙: 総天然色 (上質紙)
  • 本文: 白黒・上下二段組み
  • 発行: 2003年11月1日
  • 絶版: 2006年6月7日
  • 重さ: 110グラム
初出: 2004年03月08日
更新: 2021年02月13日
著作: 鈴響 雪冬
Copyright © 2005-2021 Suzuhibiki Yuki

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